銀魂短編

□ほっこり甘味気分
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「わー、やっぱり混んでますね」
「一応最近の流行りらしいからなァ」

最近出来たらしいこの店は中々に盛況なようだ。
二人揃って店の外まで伸びる列の最後尾へ並ぶ。

暫く後その列がかなり進んだところで、店員がやって来てメニュー表を渡していった。
それを受け取った銀時の手元を、新八が興味深そうに覗き込む。

「わぁっ、美味しそう!」
「だよなァ。見てるだけでもたまんねぇよコレ」

嬉しそうに顔を綻ばせる新八と、僅かに目に光の宿った銀時。
沢山あるメニューの彼是を指指し合ってキャッキャとはしゃぐ。
コレがいい、そっちもいいと二人で悩むのは楽しいのだ。

「あ、こっちはパンプキン味ですって」
「お?この前はそんなの無かったぞ」
「期間限定って書いてありますから、恐らくはハロウィン仕様ですね」
「なるほどねェ。店側も色々考えてんのなァ」

改めてそれを眺めて銀時がしみじみ呟いた。
けれどもまだまだ決めかねているらしく、またジッとメニューと睨めっこし始めた。

甘味の写真を真剣に見つめる大人の男、もう見慣れてはいるがやはり少し面白い。
あと、ほんの少しだけ可愛らしいとも思う。
新八はそんな銀時を見上げてクスリと笑った。



並び始めてからここまでの待ち時間は数十分だった。
今漸く、両者の元へ注文した商品が運ばれてきた。
銀時は大盛りフルーツとホイップクリームのパンケーキ、新八はチョコバナナとアイスクリームのパンケーキ。
待ち侘びたそれを、二人一緒に頬張った。


「えへへ、美味しいですね」
「だな。待った甲斐もあるってもんだ」

新八にとっては普段は中々食べる機会の無い甘くてふかふかのおやつ。
何口か嚥下したところで頬をピンクに染めて満面の笑みを見せた。

こうしてもぐもぐと行儀良くおやつを食べる彼が可愛らしい。
またしてもどこか幼く見える新八を眼前に、自身のパンケーキを頬張りながら銀時がフッと笑った。

「ホンットいい顔で食うねお前」
「だって美味しいんですもん。そう言う銀さんこそ、顔が綻んでますよ」
「お前ェが面白ぇんだよ」

新八としてはただ大人しくおやつを食べているだけであり、何がそんなに面白いのかさっぱり分からない。
よく分からない事を言う銀時に首を傾げた。

けれどもこうして銀時と二人で穏やかに甘味を食するのは、やはり楽しくて嬉しい事である。
自身の皿の上に盛り付けられたアイスを一口分掬って、銀時の方へ差し出した。
そして「どうぞ」と言ってニッコリ微笑んでやれば、ニッと笑った銀時がすぐに食いついた。


「ねぇねぇ銀さん。これから時々連れて来てくださいよ」
「んー?そうさなァ、お前が良い子にしてたらな」
「え?僕はいつだって良い子じゃないですか」

彼がいつも良い子だなんて事は、勿論銀時自身が誰よりもよく分かっている。
ただほんの少しだけ、歳上の兄貴基、旦那風を吹かせてみたかっただけだ。

たが銀時のそんな些細なお遊びなんて新八にはお見通し。
ニッコリ微笑んで、銀時に差し出されたイチゴをパクりと頬張った。




「お待たせしました。ごちそうさまでした」

銀時より少し遅れて食べ終わった新八。
ボーッと窓の外を眺めていた銀時の横顔に声を掛けた。

「他にも何か食う?」
「いえ、もう十分です。晩ご飯食べられなくなっちゃいますから」
「そうか」
「あー、美味しかった。大満足です僕」

新八が、カップに僅かに残っていた紅茶も飲み干した。
今日の彼は始終嬉しそうである。
満足だとの言葉通りまたふわふわと笑みを湛えている。

美味しい、楽しい、嬉しいとストレートに感情を表に出す新八。
自分の傍でこんなにもウキウキしてくれればデートのし甲斐もあると言うものだ。
素直なこの子を見ていた銀時もまた、とても満足である。


「・・・さて、帰ってイタズラすんぞ」
「はい?」
「大人はな、菓子もイタズラも両方楽しむもんなんだよ新八クン」

程よい満腹感も加わってほっこりと温かい気分の両者。
しかし銀時がニヤニヤと不穏な事を言い出した。

「せっかくハロウィンだし、生クリームプレイとかどうよ?」
「ヤですよそんなの」
「えー」
「まったくもう。よくそんな変な事思いつきますね・・・」

銀時のマニアックな提案に新八が眉を顰める。
しかし誘いそのものは拒否しないのだ。

それどころか、顔を赤くして「・・・じゃあ、早く帰りましょう」ときた。
本当にこの子は、どこまでも素直で可愛い嫁なのだ。
こなってはもう浮かれた銀時のニヤニヤが止まらない。
帰ったら存分に甘くトロトロにしてやると決めた。


さて、そうと決まれば帰宅を急ぎたい。
美味しいおやつの後の美味しいデザートを食すべく、銀時は新八の手を繋いで上機嫌で歩き出した。


END
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