銀魂短編

□温かくて宝物
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それからは何事も無く買い物を終えた。
ちゃーんとケーキだって買ったし。
あと晩飯の食材だって色々買ってきた。

途中で妙な奴らに捕まっちまった事は、もういい。
今日の俺は機嫌が良いもんで心が広ぇの。


帰ってくるなり新八は晩飯の準備に取り掛かり始めた。
お前はアレだな。
すっかり主婦が板についてんね。
しかも鼻歌なんて歌っちゃってさァ。
ホント可愛いでやんの。


今日の晩飯は鍋。
だいぶ涼しくなったってんで、今シーズン初のな。
あー、楽しみ。
早く出来上がらねぇかね。


「あれ?どうしたんです銀さん。
 居間でのんびりしてたんじゃなかったんすか?」
「手伝う」
「え?んー、普段ならお願いするところですけどね。
 いいですよ今日は」
「何で?」
「誕生日ぐらいゆっくりしててくださいよ。
 何なら温かいお茶でも淹れてあげましょうか?」

・・・手伝うっつってんのに、逆に茶ァ勧めるってどうなのよぱっつぁん。
いやまァ、気ィ遣ってくれんのは嬉しいけど。

でも俺って自他共に認める天邪鬼だし?
お前がそんなニコニコして優しくしてくれるんなら尚更手伝いたくなってきた。
え?なら普段から手伝いぐれぇしろって?
あー、それはまた別問題なの。

「・・・カセットコンロ、持って行っとくぞ」
「ふふ、じゃあお願いしますね。
 あ、ボンベにガスが残ってるかついでに見といてください」
「あいよ」

飯の準備をする新八の後ろ姿、何回見ても飽きねぇ。
おかんっつーか、嫁さんっつーか。
何でコイツはこうも家庭的な匂いがプンプンすんだろうな。
中身は極々普通の16歳男子だってのに。

よし、手元のこれ運んだら後ろから抱き付いてやろう。




「オイ銀ちゃん!肉ばっか取るんじゃないネ!」
「んだよ、いいだろうが今日ぐれぇ!
 テメーは質より量なんだろうが!だったら大人しく野菜食っとけ!」
「おとな気無いヨ!肉は育ち盛りの十代に譲るべきアル!」
「ああもう!ケンカをしないの二人共!」

ったく、ウチの鍋っつったら毎回このテのやり取りがあるんだよなァ。
たしかに鍋なんてワイワイやってなんぼだけど。
それにしても進歩しねぇよな俺達。

ギャアギャア騒ぐ俺と神楽を嗜めつつ、新八だけはニコニコしてやがる。
・・・って、ちゃっかり肉も取ってるあたりお前も着実に強かになってんね新八クン。
これもウチの生存競争に揉まれ続けてるおかげってか?


///

三人揃って鍋も食ったし、ケーキも堪能した。
せっかくホールケーキ買って来たっつーのに、あっちゅー間に無くなっちまった。
誰だよ俺の楽しみを半分以上平らげやがった奴は!
・・・って、んな事ァ語るまでもねぇか。

新八よォ、だからホールケーキ2つ買うべきだって銀さん言ったのに。
お前ェは一切れで十分なのかもしんねぇけど、俺ァせめて半分はいきたかったぜ。
チッ、神楽のヤロー覚えとけよ。
来月のヤツの誕生日ケーキでリベンジマッチといくかね。

「私の誕生日のケーキも渡さないネ」
「テメー勝手に俺の心の声読んでんじゃねぇぞ」
「心なんて読まなくても顔に書いてあるアル」

このヤロー、ニヤニヤしやがって。
ったく、誰に似たんだか。


「因みに誕生日は新八も渡さないヨ」
「あ?」
「朝から晩までマミィに存分に甘え倒す予定アル。
 マダオは一人で寂しく不貞寝でもしてるヨロシ。・・・ぷぷぷっ」

ったく、コイツは可愛げもクソも無ぇな。
俺はお前をそんな子に育てた覚えは無ぇし、新八だってちゃんとまともな教育施してる筈だぞ。

とりあえず、テメーの誕生日とやらは忙しくなりそうだな。
ケーキも新八もそうやすやすと奪われてたまるかってんだコノヤロー。


「ほらほら二人とも。ケンカはダメだよ」
「ケンカじゃなくて牽制アル。
 まぁいいネ、今日はもう寝るアル」
「ちゃんと布団被って寝るんだよ。最近朝晩は冷えるからね」
「分かってるヨ。お前は今日はそこの坊やの世話だけ焼いてればいいネ」

そう言うなり神楽は大あくびをかまして去って行った。

・・・やけにあっさり引き下がったのはアレだな。
こりゃ後日酢昆布要求されるに違ぇねぇ。
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