銀魂短編

□温かくて宝物
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「あれ?銀さんと新八君じゃん」
「おー」
「こんにちは長谷川さん」

新八と並んで歩いてる道すがら。
公園の前で長谷川サンとばったり会った。
相変わらずグラサンだなこのおっさんは。
ったく、仕事もしねぇでこんな真っ昼間から呑気なもんだな。
(まァその辺は俺もあんま人の事言えねぇけど。)

「2人揃って何処か行くの?」
「えぇ。銀さんのメインを買いにね」
「メイン?」
「ふふっ。銀さん今日誕生日なんですよ」

・・・新八クン?
お前ェ部外者にしょうもねぇ事ペラペラ喋るんじゃねぇよ。
俺の誕生日なんてマダオに教えてもしょうがねぇだろ。
んな事ァ身内のお前らだけが知ってりゃそれでいいの。

つーか、何でお前がそんなに嬉しそうにしてんのよ。
何だか知らねぇけど、照れ臭ぇなオイ。

「へぇ、そうなの?おめでとー」
「あー、うん」
「よかったねぇ銀さん。祝ってくれる相手が居るなんて羨ましい・・・」

あ、ダメだこりゃ。
マダオが遠い目ェし始めたぞ。
グラサン越しでもハッキリ分かる。

「そう言う訳なんで、今夜は銀さんの事貸せないんです。すいませんね」
「ま、そゆ事。祝いに酒奢ってくれんなら今日以外でヨロシク」
「ちぇっ、何だよ何だよォ・・・」

長谷川サンの周りにだけ木枯らしが吹いてんの、絶対ェ見間違いなんかじゃねぇよな。
こりゃまた随分と寒そうだ。

それに比べて新八の纏うふわふわして温けぇオーラときたら。
お前それちょっと長谷川サンに分けてやれよ。
・・・あ、いや。 それァ絶対ェ無し。
新八のモンは俺のモン、だからその温けぇのは全部俺のだから。
悪ィねェ長谷川サン。


「それじゃあ長谷川さん。僕達はこれで失礼しますね」
「じゃあな」
「あぁ、ハツゥ〜・・・」

ナイス新八。
いいところで話切り上げた。

どうやら哀れなマダオの未練を刺激しちまったらしいな。
別に、そんな気なんて無かったけどよ。
まァ何にせよヤツに僻まれる前に逃げられてよかったぜ。
新八は相変わらずご機嫌だし。
こりゃ鼻歌でも歌いだしそうだな。

・・・それにしてもだ。
奇特なヤツだなお前ェは。
何処ぞのマダオに俺の事話してそんなに楽しいの?
しかもちょっと自慢気だったじゃん。
あー、こりゃ何だ。
胸の辺りがよォ、何かこうムズムズする。


///

「あ、桂さん」
「おや、新八君に銀時ではないか」
「こんにちは」
「あぁ、こんにちは」

あーあ、また面倒くせぇヤツに会っちまった。
この電波野郎、相手にすっと疲れんだよ。
ホラ新八、挨拶したんならもう気ィ済んだろ。
相手にしてねぇでさっさと行くぞ。

「今日はエリザベスさんは一緒じゃないんですか?」
「あぁ、アイツは今日は別の用事があるようでな」
「そうなんですか。お二人ともお忙しいですもんね」

オイィィ!
だからお前ェはニコニコと会話弾ませてんじゃねぇよ!
こんな所でヅラなんかと立ち話してどうするつもりだ。
俺達は今イイもん買いに行く途中でしょうが。

「君達はこんな所で何をしておるのだ?」
「僕達は、これから銀さんの好物を買いに」
「・・・あぁ、成る程」

あ?
ヅラの野郎が俺と新八を交互に見てる。
しかも何をニヤニヤしてやがんだよ。
腹立つからやめろソレ。

「・・・銀時。くれてやる」
「何だよコレ?」
「わ、よかったですね銀さん」

おもむろに手渡されたんまい棒。
一応は貰っとくけど、気味の悪さは拭えねぇ。
一体ェ何だってんだよ。

「あれから、もうどれぐらい経ったか・・・」
「どうしたんですか桂さん?」
「ん?昔の事だがな、ある年のこの日、此奴が一人で随分と荒んでおってな」
「・・・?・・・あ、ヅラテメー!昔の事なんて蒸し返してんじゃねぇよ!」

チッ!
この野郎今日が何の日か覚えてやがったのか!
んまい棒寄越してきたのはそういう事かよ。

つーかテメー、新八にしょうもねぇ事教えんな。
俺だってんな昔の事ァとっくに忘れてたってーのに。

やめろ!
やめて下サイ!

「銀さんがですか?」
「あぁ、そうだ」
「どうしてですか?」
「あああ!もういいだろお前ら!ホラ新八、さっさと行くぞ!」

クソー、これ以上昔の事なんて暴露されてたまるか。
昔は昔、今は今だろ。
ったく、俺の威厳に傷でもついたらどうしてくれんだ。

「今度、坂本にでも教えてやるとしよう」
「はァ!?」
「あの時のお前が今ではこんなになったと知ったら・・・ククク」
「テメー!笑ってんじゃねぇ!」

この野郎、完全に面白がってやがる。

はァ、やっぱり疲れたわ・・・。
だからこいつと立ち話なんてしたくなかったってーのに。
この野郎と関わったところで、碌な事になったためしは無ぇからな。
あーあ、今度は新八が俺とヅラを交互に見やって、キョトンとしてる。


「よかったな、銀時」
「・・・。・・・まァな」

ケッ、俺の心中なんてお見通しってか。
これだから腐れ縁なんてやつァ始末が悪ィ。

もうこれ以上うぜぇ事になる前に、俺は新八を連れて立ち去る事にする。
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