銀魂短編

□素直って最高
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そして本日の仕事も無事に終了。


それなりにくたびれた様子の銀時と神楽。
それに比べて殆ど疲労してはいない様子の新八。
今日は全員ヘトヘトになる事を覚悟していたというのに、これでは何となく納得がいかない。
なので仕事自体は上手くいったというのに新八はどこか不満そうだ。
疲れた疲れたと互いに言い合っている銀時と神楽の背中を、複雑そうな表情でジッと見た。

「腹減ったアル。私もう帰るヨ」
「そうさなァ。オイ新八、俺らも行くぞ」
「え?あ、はい・・・」

二人が突然振り返ったので少し驚いた。
眉尻を下げてぎこちなく返事をする新八の頭を、銀時がポンと撫でる。

「どうした、浮かねぇ顔して」
「いえ、別に何でもないんです」
「ならいいけど」

本当は自分ももっと仕事をしたかったのだと伝えたいが、正直にそう答えるのは何となく憚られる。
新八は曖昧な笑顔を繕ってこの場を受け流した。


///

三人と一匹での帰り道。
三叉路へ差し掛かったその時、銀時の原付きと神楽の乗る定春がピタリと停止した。
そして、神楽がくるりと二人の方へ振り向いた。

「そんじゃ、私達はこっちに帰るアル」
「おー。気ィつけて帰れよ」
「二人共何ふざけてんの。帰る方向は全員同じでしょ」
「いんや違ぇ」
「はい?」

何を訳の分からない事を言っているのだと、新八が眉を顰める。
そんな彼に、銀時と神楽がニヤニヤと笑ってみせた。

「神楽と定春はそっち、俺とお前はこっちだ」
「どうしてですか?」
「んー?それァな、俺らは特別に今から遊びに行くからだ」
「遊びに??」

新八は益々訳が分からなくなった。

突然そんな事を言われてもイマイチピンと来ない。
今日はこのまま真っ直ぐ万事屋へ戻って、すぐさま夕食の準備に取り掛かる心積もりなのだ。
ついでに言えば今日一日頑張って働いた二人への労いの意を込めて、彼らの好物である肉じゃがを作る予定だった。

新八がキョトンとしたままなので、銀時が彼の頭をポンと撫でた。

「ホラ、あんまり遅くならねぇうちに出発すんぞ」
「え?神楽ちゃんは・・・?」
「今日のところは留守番しといてやるネ。
 だからお前ら存分に乳くり合ってくるヨロシ」

そう告げるなり神楽が握りこぶしの間から親指を突き出して見せた。
新八が慌ててそれをやめさせようとするも、彼女は依然ニヤニヤと笑うばかりだ。

「お土産は弟か妹でよろしく」
「何言ってんの神楽ちゃん!」
「よっしゃ、バッチリ双子作って来るから楽しみに待ってろ」
「キャッホー!遂に私もお姉ちゃんアルな!」

銀時はこういう時ばかりノリが良い。
こうして品の無いやり取りをしては、任せておけと毎回目を輝かせるのだ。
神楽の嬉しそうなガッツポーズも、彼女がそれを本気にしているのかどうなのかを判断しかねるところだ。

こんな往来のど真ん中で何をしているのだと、段々居た堪れなくなってきた新八。
どうしようもない二人に挟まれて大きな溜息を吐いた。
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