銀魂短編
□何気ない、そんな日
2ページ/2ページ
まだ日は高いと言うのに、何の迷いもなくいたしてしまった銀八との情事。
何度も絶頂を与えてもらったが為、新八は程良く疲労していた。
彼との熱いスキンシップが一息つくと共にやって来たトロトロとした眠気に、新八は身を任せた。
眠り自体はそう長くはなかった。
新八が目を擦りながら隣を見やればそこに銀八の姿は無い。
ではリビングでまたテレビでも見ているのかとそちらへ向かったが、そこにも彼は居なかった。
ついでに玄関の様子も窺ったところ、銀八のサンダルがなくなっている。
あの人は一体どこへ出掛けてしまったのだと、新八は少し淋しく思う。
仕方が無いのでまたコタツへ座ってテレビの電源をオンにしたその時、玄関の扉が開いて愛しい待ち人は帰宅した。
「よォ、起きてたのか」
「おかえりなさい先生。何処に行ってたんですか?」
「ちょっとそこのコンビニにな」
「そうだったんですか」
帰宅が早くて安心しましたと新八が笑いかければ、銀八からもフッと微笑みが返って来た。
また新八の向かいへ腰を降ろしてガサガサと袋の中身を漁ると、彼も興味深そうに覗き込んできた。
「何を買って来たんですか?」
「んー?昼飯調達してきた」
「あ・・・。僕お昼の事すっかり忘れてました」
銀八が2つある弁当の片方を彼へ差し出す。
嬉しそうにそれを受け取った新八、ありがとうございますと彼に礼を告げた。
そして包装フィルムを破くと同時に、いただきますと早速中身へ箸をつけた。
もぐもぐと美味しそうに唐揚げを1つ頬張る彼は何だかとてもあどけない。
そんな可愛らしい彼へ少し悪戯したくなるのは、銀八の性である。
袋の中からもう一つ何かを取り出して、新八へ見せた。
「あと、これもな」
「そ、ですか・・・」
「さっき全部使いきっちまったからな。これでまたいつでも安心して愛を育めるぞ」
わざとらしく銀八が差し出して来たのは0.02と数字が強調された箱。
はっきり言われずともそれが何なのかは新八にも瞬時に理解が及んだ。
だが色事やそれに纏わる事柄にはまだまだ初心さの抜けない新八。
ニヤリと笑う銀八へ、少し戸惑いながら箱を返した。
自分の仕掛けた小さな悪戯へ思った通りのリアクションが返ってきたので銀八はとても満足だ。
ククッと声を漏らして笑った。
「飯食ったら早速2回戦するか?」
「い、いえ。もう少し後でお願いします・・・」
「んじゃ今日泊まる?」
「えと、お邪魔じゃなければ」
「よし、決定な」
何かと新八を泊まらせたがるのはいつもの事だ。
新八もそれをよく分かっているし、彼が自分と一緒に居たいと暗に示してくれている事は本当に嬉しい。
特上の笑みを湛えてはいと頷いた。
「・・・けど、手加減して下さいよ?」
「一応善処する。
けど明日日曜だし、浮かれちまったらゴメンね」
銀八の顔は相変わらずニヤニヤと締まりが無いが、纏う空気はとても柔らかい。
新八は仄かに頬を染めながら、今度は卵焼きを一つ齧った。
END