銀魂短編

□夢追う君へ、愛を込めて
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【2013年・新八誕生日記念】

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今日は8月12日、新八の誕生日である。
本来ならばこの日は身内で慎ましくお祝いをするのが毎年の習慣であるが、今年は違った。

運が良いのか悪いのか、今朝万事屋へ1件の仕事が入った
それ自体は何の事の無い簡単な依頼であり銀時1人で事足りそうだ。

新八はそれを喜んだが、銀時が今日はダメだと渋った。
相変わらず家計は苦しいと言うのに全く乗り気にならない銀時に容赦無く新八の檄が飛んだ。
そして、銀時が行かないのならば自分が行くと溜息を吐いた。


自分の誕生日に家族と、そして恋人とまったり過ごす事よりも仕事を優先する新八。
ちなみに昨夜3人で今日が彼の誕生日である事を話題にしたので、本人が忘れていると言う事は無い筈だ。
どこまでも淡白で現実主義な彼に、仕方が無いと銀時が折衷案を出した。

デートがてら、お前も一緒に来いと。

仕事をデートにするとは公私混同も甚だしいが、それでも銀時は本気だった。
頷かないならばこのまま1日中お前を調教すると、あろう事か神楽の目の前で押し倒された。


新八とて、銀時の心遣いは有難く思っている。
仕事よりも自分を優先しようとしてくれる彼が本当はとても嬉しい。

なのでその時は「神楽の教育上のペナルティ」という建て前の元で鼻フックデストロイヤーをかましつつ、ニッコリ笑って銀時の提案へ合意した。



しかしそれが悲劇の元であった。
仕事だと言うのに浮かれた2人へ天から罰が下ったのかもしれない。


万事屋と言う職業柄、色々と人から恨みを買う事もある。

本日の依頼を完了して帰る途中、2人は数名の柄の悪い浪人達に取り囲まれてしまった。
浪人達は皆こちらへ真剣を向けている。
どうやら、少し前に請け負った依頼での因縁らしい。


睨み合いの中、2人は互いに木刀を構えた。

「・・・銀さん、この人達どうするんです?」
「向こうがこんなにやる気とありゃァ、相手してやるしかあるめぇよ」
「・・・やっぱり、それしかないんですね」
「おうよ、ちゃっちゃと伸して帰るぞ」

ただのチンピラから天人まで幅広い戦闘経験を持つ銀時に新八。
またこれまでに様々な場を凌いできただけあってこの手の事態にも慣れたものだ。
向かってくる相手を2人で片付ける。


だが粗方始末し終えたその時思いもよらぬアクシデントが起こった。

相手の攻撃を防御した際、新八の木刀が折れたのだ。

マズイと思ったその時にはもう間合いに踏み込まれていた。
何とか瞬時に身をかわして致命傷は避けたものの、負傷は免れなかった。

「っ・・・!」

刀傷の熱く鋭い痛みに新八が表情を歪めた時、トドメの一太刀が振り下ろされた。


それでも新八は諦めなかった。
相手が刀を振りかぶった一瞬の隙をついて腹部を蹴る。
そしてよろけかけたところを渾身の体当たりで攻め込み地面へ沈めた。
相手が落とした刀を拾って突きつけてやれば、悔しそうに捨て台詞を残し去って行った。


その後間も無く、銀時が全て蹴散らして片付けた。
所々を血に染めて蹲る新八へ駆け寄れば、彼は真っ二つになってしまった木刀を手に溜息を吐いていた。

「新八、大丈夫かオイ?」
「えぇ、何とか。・・・でも、木刀が折れました」
「不利なのによくやったな。
 流石、やれば出来る子だなぱっつぁん」
「えへへ・・・」

怪我をしたと言うのにニコニコと笑って見せる新八。
それは褒められて嬉しいという感情と、銀時に気を遣わせまいとする気持ちが入り混じっているらしい。
そんな彼がいじらしくも心配で、銀時はとても複雑そうな表情を浮かべる。
そして新八の身体をそっと抱き寄せ、額へ労うキスをした。


新八が負傷したのは、左腕と右脚。
まだ出血しているが傷自体はそんなに深く無さそうだ。
早く連れて帰って手当を施すべく、銀時がその身体を背負った。

「・・・相っ変わらず軽いねェお前。
 風が吹いたら飛ばされんじゃね?」
「むっ、これでも少しは成長してるんですよ」
「そうか?とにかく今日からもっと飯食え。
 オメーは普段から少食過ぎんだよ」

背中へ感じる重みが16歳男子にしては少し頼りないと、銀時はまた心配になった。


だがそんな銀時の心中など知る由もない新八、久しぶりに背負われた大きなこの背中がいつも以上に頼もしく見える。
彼の肩口や首元へ時折スリスリと頬擦りしたりと、すっかり甘えて遊び出した。

「えへへっ、銀さんっ」
「何だよ?」
「ふふっ、何でもないです。ちょっと甘えたいだけです」
「そりゃァ結構なこった。帰ったら正面から甘えてこい」
「それは・・・、恥ずかしいんで無理です」

何がそんなに楽しいのか、新八がクスクスと笑い続ける。
珍しい程にご機嫌な新八が可愛らしくて、銀時の表情も緩みっぱしだ。
万事屋へ戻ったら手当てと共に沢山キスして甘やかしてやろうと、銀時はひっそり企てた。


暫くテンション高くきゃっきゃとはしゃいでいた新八だが口数が少なくなってきた。
どうやら睡魔がやって来たらしく、時折放つ言葉から力が抜け始めた。

「・・・んー、銀さんの背中温かい。安心します・・・」
「寝てても構わねぇよ?
 俺がちゃんと連れて帰ってやるから」
「ふふっ。何か、銀さん父上みたい・・・」
「バーカ、俺ァお前の愛しい旦那様だろうが。
 一番大事な事だってーのに、間違ってんじゃねぇよ」
「そうでしたね、ごめんなさい」

いくら夢現であるとは言え、新八の間違いを見逃さない銀時。
だがそれを訂正する口調はとても優しい。

そんな銀時の纏う温かさがとても心地良くて、新八はニッコリと笑いながら眠りへ落ちた。
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