銀魂短編

□お前が特効薬
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今日もやはり朝から雨が降り続いている。

朝食の準備を済ませた新八はいつも通り神楽を起こした後、銀時を起こした。
しかし現在絶不調中の彼は普段に輪をかけて寝起きが悪い。

それはもう起こす者の気合いでどうにか出来るレベルを超えており、新八は諦め半分と心配半分で大目に見てやっている。


こうして毎日だいぶ遅れて起きてくる銀時を見て、神楽は要らぬ知恵をつけた。
食卓に並べられている銀時の分のおかずを、彼の居ない間につまみ食いするようになったのだ。
最初は一口、二口と少量だったが日を追うごとにその量は増えている。


今日も銀時はなかなか起きてこない。
こうしている間にも、彼の分のおかずは減少の一途を辿っている。
そしてやっと銀時が重い身体を引きずって起きて来た頃、それは既に元あった量の半分程度になっていた。

それでも彼は何も言わない。
今日は調子に乗った神楽が更に真横から彼のおかずを横取りしてみるも、それでも銀時は無言だった。
あまりにも皿の上のボリュームが乏しいので、見かねた新八が何か追加のおかずを作ろうかと申し入れてやるも、銀時はそれを断った。
白米と味噌汁とほんの僅かに残ったおかずだけを黙々と食べる。


そして昼食時。
今日のメニューは焼きそばである。
テーブルの上に並べられた3つの皿からは、食欲をそそるソースの匂いが漂っている。


3人揃っていただきますの挨拶をするも銀時の様子はやはりおかしかった。
普段から食い意地だけは神楽にも引けを取らない筈なのに、全然箸が進まないようだ。
そして、ほんの少し食べたところで残りを全て神楽へ譲ったのだ。

「・・・ごっそーさん」
「え、もういいんすか?」
「うん。俺もう十分腹ァ膨れたから」

新八が驚いた顔を向けるも銀時は全くこちらを見ない。
そして俯き加減でゆっくりと立ち上がり、1人和室へと篭ってしまった。

思わぬおかずの追加に喜んでいる神楽を余所に、新八は益々彼が心配になってきた。
銀時によって閉められてしまった和室の扉を、箸を持ったままボンヤリと眺める。

「・・・気になるアルか?」
「うん・・・。あの人ここのところずっとボーッとしてて、何か例年以上に辛そうだし」
「きっといつにも増して天パが暴れまくるから拗ねてるだけネ。
 多分その内元気になるから、ほっとくヨロシ」
「うーん、でもやっぱり心配だなぁ。あんなに元気が無いと、ちょっと可哀想だよ」

新八は、依然困った顔で和室の扉を見つめ続けている。

それに引き換え、神楽はどこか面白そうだ。
キヒヒと笑って扉の向こうの彼を茶化し出す。

「死んだ魚の目が更に死んでるアル。その内、腐臭まで放ち出すかもしれないヨ」
「もう、あんまり悪口言わないであげてよ。
 もしかしたら身体の具合が悪いのかもしれないし。湿気の所為で頭痛がするとか」
「・・・ケッ。お前はホントに銀ちゃんに甘いアルな」

自分をやんわりと制して銀時を庇う新八に、神楽は遠慮する事なくジトリとした視線を向けた。
そして唇を尖らせて不満を漏らす。

だが新八はそれについて何か言葉を返す事はせず、ただニッコリと彼女に笑顔を返した。


「神楽ちゃん、よかったら僕の分も食べる?」
「・・・フン、しょうがないからこの後アネゴに遊んで貰いに行って来てやるアル。
 その焼きそばは、見返りって事で貰っとくネ」

新八が自らの皿を差し出せば、神楽は今度は大きな溜息を吐いてそれを受け取った。


そしてそれから間も無く3枚の皿をキレイに空けるや否や、彼女は愛用の傘を広げて恒道館道場へと繰り出して行った。
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