銀魂短編
□花に乗せる想い
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新八は近頃、1人でブラブラと出歩くのがお気に入りだった。
社長たる銀時のやる気の無さも手伝って、万事屋の日中は基本的にいつも暇だ。
そんな退屈な昼下がり、新八はこの日もぶらりと万事屋から出てきた。
新八が向かうのはいつも決まった場所だった。
そこは公園の遊技スペースを抜けた場所で、ちょっとした芝生が広がっている。
芝生の端には大きな木があり、適度な日陰もある。
公園内といえどここには遊具が存在せず、子供達には人気が無いらしい。
新八はいつもひと気が無いこの場所で、静かにのんびりと日向ぼっこをするのが好きなのだ。
今日もこの場所へやってきた。
朝の時点で大方の家事は終わらせたし、買い物までにはまだ時間が余っている。
木の陰にごろりと寝転がって空を仰げば気持ちの良い青空が広がっていた。
「今日も、いい天気だなぁ・・・」
穏やかな口調で新八が声を漏らすが、もちろん誰からも返事は返って来ない。
それに構う事無く、新八はそっと目を閉じた。
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ここへ来てから暫くの時間が過ぎた。
目を開けて起き上がれば、そろそろ買い物へ行く時間が迫っているようだ。
新八はよいしょと軽い動作で立ち上がりいつものスーパーへと向かう。
「ただいま戻りましたー」
買い物を終えた新八が万事屋へ帰ってくると、銀時が相変わらず暇そうに居間のソファに寝そべっていた。
「おけーり」
「もう、またゴロゴロして。暇なら仕事探して来て下さいよ」
「あー、また気が向いたらな」
「ホンットにもう・・・」
銀時の目は完全に死んでおり、新八から小さな溜息が零れる。
そんなどうしようもなく燻った銀時に呆れながらも、新八が懐から何かを取り出した。
「はい、銀さん。今日のお土産です」
「あ、あぁ・・・」
「えへへ」
新八が銀時に手渡したのは、小さな花。
屈託無くニコニコと笑う新八に戸惑いながらも、銀時は素直にそれを受け取った。
銀時に受け取って貰えたのが嬉しかったのか、新八は上機嫌で夕食の準備へと取り掛かり始めた。
(・・・ホント、最近どうしたのアイツ・・・)
新八が毎日1人で出歩くのが内心気になっていた銀時だが、それ以上に新八からの“お土産”を不思議に思っていた。
出掛けて行っては必ず毎回お土産と称して小さな花を1つ摘んでくる。
それは茎を含めても10pにも満たないような、とても可憐な花だ。
そして必ずそれを嬉しそうに自分に渡してくれるのだ。
ちなみに今日差し出されたのは、ピンク色の小さくて可愛らしい花だ。
そんな新八に、銀時は柄にも無くいつも胸をキュンとさせていた。
今日も先程受け取ったこの花を眺めつつ、贈り主の事ばかりを考えた。
(・・・あぁー、どうすっかな・・・)
浮かれた様子でガリガリと頭を掻いて、銀時は貰った花を一旦社長席の引き出しへと仕舞った。