銀魂短編
□誓いの証
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【2012年・新八誕生日記念】
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8月12日の夕刻前、独り暮らしをしている新八のワンルームのインターホンが鳴った。
今日は誰とも会う約束をしていないし、宅配便が来る予定も無い。
となると来訪者の目的はおそらく新聞の勧誘か何かだろう。
新八はそう判断し、面倒くさそうに外に向けて返事をした。
「・・・はーい?」
しかし来訪者から返事は返って来ず、新八は仕方なくドアを開けた。
ゆっくりと開いたドアの隙間から来訪者を確認すれば、そこに立っているのは自分の担任であり恋人でもある銀八だった。
「せんせ・・・!?どうしたんですか?」
先ほどの面倒くさそうな表情から一変、新八の表情がパッと明るくなる。
そんな新八の喜ぶ顔を見た銀八もまた、いつもの気だるげな表情を嬉しそうな顔へと変えた。
こんな場所で立ち話も何だからと新八は銀八を自分の部屋へと招き入れる。
「それにしても、急に来るからビックリしました」
「面倒くさそうな返事だったなァ」
「だって、まさか先生だとは思わなかったんですよ」
新八はニコニコと会話を交わしながら銀八にアイスココアを用意する。
新八はココアを常飲しているわけではないが、こうして時々銀八がここへ訪れるようになってからは彼の為にココアを常備している。
「お、アイスココアじゃん。超美味そう」
「今日も暑いですし、冷たい方がいいかと思いまして」
「さっすが俺の志村クン。ホントよく気が利くねェ」
「今ポテチしか無いんですけど、よかったらどうぞ。
こんな事なら、クッキーとかも買っとけばよかったなぁ・・・」
目の前に置かれたココアを嬉しそうに飲み始めた自分を微笑ましげに眺めながら、新八はお菓子も勧めてくれる。
そんな来客としての自分の扱いに、銀八はハッと本来の目的を思い出す。
「志村クン、俺今日は大事な要件があって来たんだよ」
「一体どうしたんですか?」
少々改まって銀八が告げれば何事だと新八の表情が硬くなった。
そんな様子の新八に、銀八はつい苦笑する。
「・・・今日、お前誕生日だろ」
「え、覚えててくれたんですか?」
意外だというように、しかしとても嬉しそうに新八が微笑む。
喜ぶ様子の恋人に何となく照れ臭くなった銀八は、そっと自分の元へ引っ張って抱きしめた。
腕の中で大人しくしている新八をギュッと抱きしめて耳元で囁く。
「・・・志村、おめっと」
「えへへ、ありがとうございます」
嬉しさを表現するように、新八がすりすりと銀八の胸元へ甘える。
そんな可愛い新八が愛おしくて仕方のない銀八は、自然と新八の旋毛に自らの唇を落としていた。
サラサラで艶のある髪からはフローラルの香りが溢れており、銀八はますます引き寄せられる。
銀八の好きなようにさせていた新八だが、クスクスと笑い出した。
「先生、くすぐったいです」
「んー。何かすっげーいい匂い」
暫くじゃれ合った後、2人の間に不意に沈黙が訪れた。
銀八がポンポンと新八の頭を撫で、今度はその小さな唇にキスを落とした。
始まりは軽いバードキスだったが、それは少しずつ長くなり回数も増していく。
幾多のリップ音が本格的に部屋中に響き始める頃、銀八が自分より一回り小さな新八の身体をそっと組み敷いた。
「・・・ん、せんせ・・・」
普段なら照れてほんの細やかに抵抗する新八だが、この時ばかりは大人しく銀八に身を任せきっていた。
つい数分前までは無邪気に笑ていたのに、すっかり艶のある表情へと変わってきた。
銀八が鎖骨を吸って紅い痕を付ければ小さく息を詰めるも、新八はどことなく嬉しそうだ。
しかし、ここで銀八が予期せぬ事を言い出した。
「・・・志村。俺、正直迷ってる・・・」
「ま、よう・・・?」
「このまま続けるか、ここでストップするか。・・・今日は、ヤりたいばっかじゃ無ェんだよ」
「・・・せんせ?」
「今日、お前の誕生日だからさ。これでも真面目に祝うつもりなんだよ。
この後一緒に晩飯食いてェし、一応ケーキとかもあるし」
銀八が新八にそう告げる面持ちは真剣だ。
しかしそうは言うものの、銀八の目には既に確かな欲情の色が灯り始めている。
「・・・だからよ、ホントは軽いちゅーまでにしとくつもりだった。
けどお前がずっと素直に応じてくれてたから、嬉しくてついソノ気になっちまった」
こうしている間にも、銀八の目に灯る欲情の色は濃くなる一方だ。
そんな銀八に新八はトロンと微笑んだ。
「・・・先生。僕、このまま先生が欲しいです・・・」
「・・・いいのか?」
銀八が静かに尋ねると、新八はコクリと頷いた。
そして続きをおねだりするかのように、自ら銀八へ優しいキスを送った。
「・・・出来るだけ負担かけねぇように、優しくすっから。だから、この後一緒に晩飯食おうな?」
「はい」
双方微笑み合いどちらからともなく口づけたのち、ゆっくりとそして優しく情事が再開された。