銀魂お題

□もうちょっと危機感持ってよ
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あの日より、俺の頭の中を占めるのはアイツの事ばかり。


ウチのクラスの学級委員長兼俺の助手、志村新八。


通称は志村弟、良くも悪くもオカン気質な男子生徒。
だがクラスの仕事や俺が言いつけた雑用をちょこちょことこなす姿はまるで小動物のようだ。


はっきり言って、とても可愛らしい。



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それはある日の出来事だった。

俺が朝のSHRの為に3Zの教室へ向かえば、そこでは今日も相変わらず賑やかな生徒達が騒いでいる。
担任が入ってきた事になんて誰も気づきやしねぇ。
ま、いつもの事だしどうでもいいけど。

そんな喧しい教室内をグルリと見渡せば、俺の目はすぐに気になるアイツの姿を捉えた。
教室の片隅で沖田と何やら楽しそうに話している。

真面目で控え目な志村弟と、ドSで何かと目立つ沖田。
一見毛並みが違い過ぎる2人だが、両者共に極度のシスコンという意外な共通点を持つ。
そのおかげかは不明だが、この2人はそれなりに仲良くやっているようだ。

何を話しているのかと少し会話に耳を傾けてみれば、どうやら所謂恋バナ中のようだ。
沖田が志村弟に色々と質問を投げかけている。

「初恋はいつでィ?」
「うーん、幼稚園の時だったかなぁ」
「その子とどこまで進んだ?」
「どこまでも何も、一緒に遊んでただけだよ」
「何でェ、ちゅーもしてねぇのかィ」
「当たり前でしょ、幼稚園児なんだから」


そして志村を茶化していた沖田が段々と調子に乗り始めた。
ニヤリと笑って更に志村へ質問を投げかける。

「ちなみに新八君。初ちゅーはいつでィ」
「えっ?!」


思いもよらなかったらしい沖田の質問に、志村は驚いて目を丸くした。
そして赤い顔でワタワタと何か言おうとしている。
が、そんな分かりやすい志村の仕草に沖田がククッと笑みを漏らした。

「へェ、初ちゅーはまだかィ。なら俺がその相手になってやらァ」
「はいィ?!」


とんでもない事を言い出したかと思えば、沖田がぐいっと志村との距離を詰めた。
片手を志村の腰に回し、もう一方の手でそっと顎を持ち上げる。
志村は突然の事に唖然としてしまいツッコミも出て来ないらしい。

これ、まじでマズイんじゃね?


「新八ィ、目ェ瞑れ」
「あ、あの、沖田君・・・?!」


目の前でどんどん嫌な展開が進行していく。
つーか、アイツ何考えてやがんだ。

こんな所で、よりによって志村弟に。


しかも沖田は存外に本気だ。
いつものふざけた調子が一変、目は真剣に志村を捉えている。
志村弟も本格的に動揺し始めた。

俺の中ではモヤモヤとした何かが渦巻き始める。

俺の志村弟に、何しやがる。


困惑する志村を助けるべく、俺は抱いている感情に素直に従って2人の元へ早足で歩み寄った。

「おーおー。セクハラの現行犯」
「あ、坂田先生。おはようございます」
「おはよーさん」
「チッ、せっかく新八君のファーストキスを頂けるところだったってーのに」


イライラするのを無理矢理抑え込み、得意のポーカーフェイスを貫く。
2人をじっと見据えれば、ホッとしたように微笑んでのほほんと挨拶をくれる志村弟と、心底残念そうに呟く沖田。

つーか、俺が止めに入らなかったらどうなってたんだ?


「志村弟を汚すんじゃねぇよ。コイツはお前と違って貞操の安売りはしてねぇんだよ」
「ふむ、銀ぱっつぁんは爛れた恋愛しかした事なさそうだねィ」
「余計な世話だ。とにかく、コイツに手ェ出すんじゃねぇぞ」


沖田にはキッチリと釘を刺しておく。
とりあえず今回は志村弟を守れた事に心底ホッとする。



「オーイ、HR始めっから全員席につけー」

クラス中に呼びかければ生徒達はやっと俺に気づいたらしい。
ガヤガヤと各々が自分の席へ戻っていく。
そんな中、志村弟はまだじっとこちらを見つめていた。

「ほら、お前ェも席に戻れ」
「はい」


ポンと頭を撫でてやれば心なしか嬉しそうにはにかみ、素直に自分の席へ戻っていった。
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