銀魂長編

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いつも通り3人揃っての朝食、今日も朝から銀時と神楽は食欲旺盛だ。

テーブルの上に並んでいるオーソドックスな朝食のメニュー達はどんどん皿の上から消えていく。
また、沢山炊いておいた白米が釜の中から見る見るうちに減っていく様は毎度ながら圧巻だ。

自分の作った食事を嬉しそうに食べてもらえるのが満足で、新八はいつの間にやら彼らへおかずを譲りたがるようになっていた。
今回もさっさと自分の食事を終わらせてニコニコと2人を眺めている。

「新八ィ、もっと食べないとせっかくの乳が萎むアルネ」
「オイ、ちゃんと食えっていつも言ってんだろうが。
 まァ仮に萎んでも俺が揉んで治してやるから安心しろ。けど、今はホラ」

銀時が箸で卵焼きを一切れ摘まんで新八の口元へ差し出した。

一瞬戸惑ったが、新八は素直に受け取っておく事にする。
おずおずと遠慮気味にそれを食べれば銀時がニヤリと笑った。

「間接キスー」
「ちょっと!変な事言わないで下さいよ!」
「何だよ照れんなって。つーか今更間接どころじゃねぇだろ俺達」

益々ニヤつく銀時に、神楽の冷たく射抜くような視線が突き刺さった。

そして彼女は自重する事無く持ち前の毒舌を発揮する。

「ウザいアル。キモいアル。目障りアル。臭いアル。
 そこの不愉快なクソ天パは今すぐこの場で腹を切って死ぬヨロシ」
「テメー、それァちょっと言い過ぎなんじゃねぇの?つーか最後の臭いって何!?」
「新八も新八ネ。いい加減にそこのアホの頭の中ぐらい見通せるようになれヨ。
 だからお前はいつまで経っても新八アル」
「いや名前は関係無いでしょ。
 でも確かに、いつまでもこの人に振り回されっぱなしってのも癪だなぁ・・・」


神楽の説教にうーんと考え込む新八。


そんな彼らへ、銀時はわざとらしく咳払いをした。
そして今までずっと気になっていた事を聞き出すべく改まって新八へ言葉を投げかける。

「ところで?俺も神楽もお前が今女になってる事は把握した。
 けど、その経緯を聞いてねぇ」
「あ、そう言えばそうアル。詳しく教えるヨロシ」
「あぁ、そうでしたね。実は・・・」


2人から促されて新八がゆっくり語り出す。
その間2人は静かにその声を聞いた。

「端的に言えば、姉上から差し出された飴を食べたらこうなりました」
「・・・マジでか。
 いくら姉ちゃんとは言え、そんな妙な飴なんかよく食ったなお前」
「いえ、見た目はホントに普通の飴だったんです。
 何も怪しくなかったんで疑わずに食べちゃいました」
「何味だったアルか?」
「え?・・・よく分かんない味だったけど、強いて言えばイチゴかな?」
「むをっ、何だか無性に飴が食べたくなってきたヨ!
 今から買いに行ってくるアル!そんでもってついでに遊びに行ってくるネ!」


新八の言う飴とやらに銀時は片眉を上げて訝しむ。

その傍で、神楽はこの非常事態よりもオヤツの方へ興味が移ってしまったようだ。
食費として新八が預かっている財布の中から小銭を数枚抜き取ってさっさと玄関へ向かう。
いってらっしゃいと新八が声をかければアイヨと元気な返事が返ってきた。


どこまでもマイペースな彼女に新八は微笑を浮かべる。
だが銀時の疑問はまだ尽きない。

気になる事を引き続き新八へ問い詰めた。

「んで?何でお妙はお前にそんなもん食わせたんだ?」
「それは詳しく話してはくれませんでした。
 でも多分、仕事でお客さんに貰ったとかで面白がって僕に試したんじゃないですかね?」
「後遺症が残ったりしねぇだろうな」
「身体に害は無いそうですよ。
 効果は一カ月程で、切れたら自然と元に戻るらしいです」

銀時の質問に淡々と答える新八。
声にも表情にも動揺した様子は無い。

どこか他人事のような彼の返答に銀時は更に疑問を抱いた。

「・・・お前、自分の身の一大事だってェのにやけにアッサリしてんじゃねぇか」
「騒いだって元には戻りませんしね。それに・・・」
「んァ?」
「・・・銀さんも神楽ちゃんも、拒絶しないでくれましたから。
 だから僕、すごく気が楽になったんです」
「そうか。・・・ま、害が無ぇならいいか。
 せっかくだし、楽しんじまえよ」
「えぇ、そのつもりです」

そう言ってふふっと余裕そうに笑っている新八。
出会った頃に比べれば彼は随分と逞しくなったようだ。
新八の精神の大いなる成長を目の当たりにして銀時も安心した。


「ま、何か困った事があったら言えよ」
「はい。頼りにしてます、銀さん」


髪をクシャリと撫でてやりながら銀時がそう告げれば、新八は本当に嬉しそうに笑った。

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