銀魂長編
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その日の夜、銀時と新八の間に少しのすれ違いが起こった。
泊まれと言う銀時に、帰ると言う新八。
この2人にはよくあるやり取りではあるがこの日は少し違った。
新八の様子がもう明らかにおかしいのだ。
帰ると言うその表情が青ざめている。
お願いだから帰して欲しいと懇願する新八に、何故そこまで必死なのかと銀時が問えば今度は泣き出しそうになる始末。
一体どうしたんだと抱き寄せれば、まるで拾ったその日の猫の如くバタバタと暴れて逃げてしまった。
仮にも恋人である筈の自分に対して異常なまでの警戒を向ける新八に、銀時の我慢もついに限界を迎えた。
「だァァァ!一体何なんだよテメー!
何かあるならハッキリ言えっていつも言ってんだろうが!つーか何で逃げんだ!」
つい声を荒げて一気に捲し立てれば、新八の顔から血の気が引いていくのが見て取れた。
益々表情の強張る新八を目の前にして銀時は我に返った。
大きく息を吐いて、今度は落ち着いた声で新八へ語りかける。
「・・・あー、でけぇ声出して悪かったよ。
何、今日は絶対に帰らなきゃならねぇ用でもあんのか?だったらもう無理強いしねぇから、早く帰れよ」
最後の方の銀時の口調は優しかった。
今度は逃げられないよう、控え目に新八の頭を撫でてやれば彼が不安そうに見上げてきた。
どうしたとまた優しく問いかければ、新八がおずおずと話し出した。
「・・・絶対に何もしないって約束してくれたら、今日泊まります」
「・・・わぁったよ。何もしねぇから、一緒に寝ようぜ」
「・・・布団は別々にして下さいね?」
「あぁ」
銀時が出された条件を受け入れてやれば新八もやっと少し警戒を解いた。
まだ少し控え目ながらもえへへと柔らかい笑みを浮かべている。
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互いに寝支度を済ませてそれぞれの布団へ入った。
まるで先程の荒れたやり取りなどは無かったかのように、2人の間には穏やかな空気が流れている。
他愛ない会話を楽しみつつ両者共に少しずつ眠気が強くなってきた。
互いに口数が減る中、新八はずっと考えいた。
(僕が何か隠してるって、もう完全にバレてるよね。
この調子じゃ一ヶ月なんてとても隠し通せそうに無いし、今の内に白状しちゃおうかな・・・)
元の身体へ戻るまではまだまだ時間がかかる。
そんなに長い間この鋭い恋人を欺き続けられる訳が無いと、新八はやっと決心を固めた。
遅かれ早かれバレてしまうのならばさっさと言ってしまった方が気も楽になるだろう。
そして何より、先程のようにまた銀時を傷付けかねない行動を取る事はもう絶対に嫌だ。
彼にキチンと話すべく、先ずは胸に巻いたサラシを取り払わねばと新八は布団を抜け出した。
そして然るべき下着だけを寝巻の下に纏い、新八は元の場所へ戻ってきた。
銀時の隣へ正座をし改まって彼へ話し掛ける。
「・・・眠ってしまう前に、少し話を聞いてもらえませんか?」
「お、やっと話してくれんの?」
「銀さん、さっきは逃げたりしてごめんなさい。
なのに優しくしてくれてありがとう」
「気にしてねぇよ。んで、何があった?」
「あの、実は・・・」
話の先を急く銀時へ、新八はモジモジと言い淀む。
そして暫く何かを考え込んでから彼の布団へ自ら潜り込んだ。
予期せぬ新八の行動に銀時は一瞬目を丸くしたが、勿論彼を受け入れてその身体を抱き締めた。
「・・・銀さん。僕の身体、触ってみて下さい」
「ん?」
彼の言う通り、ゆっくりとその身体を確かめてみる。
頭、頬、首筋、肩と段々手が下へ降りてきて、ついに胸部へ触れた。
本来新八にはある筈のないその柔らかい膨らみに、銀時は驚いた。
けれども、新八がまだ何も言っていない内からある程度の事情を悟った。
新八を傷付けてしまわないように、そして壊してしまわないようにと注意をしつつ、銀時の手は一向に止まる気配を見せない。
やわやわと乳房へ触れながら下半身へも手を伸ばした。
そこにある筈の新八自身が無い事に、銀時はもう驚かなかった。
一頻り新八の全身へ触れた後、銀時が穏やかに微笑んだ。
「そうか。新ちゃん女になったの」
「一ヶ月、だけですけどね。・・・気味悪くないですか?」
「そりゃまァ驚いたよ。
けど、お前に対する気持ちは変わらねぇよ」
そう言う銀時の声色はどこまでも穏やかだ。
嫌悪感や戸惑いなども全く感じられず、新八は心底安心した。
そして緊張からの解放に意思とは反対に泣き出してしまった。
ボロボロと大粒の涙を零す新八に、銀時は狼狽える事無くその涙を拭った。
「よく話してくれたな」
「・・・いつまでも隠せる訳無いので覚悟を決めました。
それに、もうさっきみたいに銀さんを傷付けるような事は、したく無いですから」
「そうか」
腕の中へしっかりと閉じ込めてその背中をあやしてやれば新八は少しずつ落ち着きを取り戻してきた。
涙が止むと、自ら銀時の胸元へ擦り寄って甘え出す。
「えへ、銀さん・・・」
「んー?なァ新八、ちゅーしよっか」
銀時が接吻を誘えば新八は素直に応じた。
それには互いに溢れんばかりの愛情が篭っており、両者をとても幸せにした。
温かさを噛みしめながら、2人は何度も何度も唇を交わした。