銀魂長編

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身体がガラリと変わってしまったその翌日。
新八は今、万事屋へ出勤するべく身支度を整えている。

着慣れた胴着に着慣れた袴。
普段と同じ格好だというのに、今はとても違和感がある。


昨日、新八は万事屋を欠勤した。
午前中は散々姉に着せ替え人形にされ、午後からは一緒に買い物へ出掛けた。
当然その際に着用していたのは女物の着物である。
万事屋という職業柄女装の経験もある為か、女の格好での外出はそれ程苦にならなかった。

何だかんだで本当にこの状況を楽しめているらしく、新八は自分自身の適応力と図太さへ感謝している。


だがこれから出勤となれば、どこか浮かれていた気分もすっかり降下してしまう。
昨日は姉の前だからまだ笑っていられたものの、あの上司と同僚の前で余裕でいられる自信は全く無い。


特に、上司とはもう随分前から恋人関係である。
当然彼とは身体の関係もある訳で、これからの一ヶ月を思うと新八は不安でたまらない。


「・・・いってきます」
「いってらっしゃい。あら、今日は随分元気が無いのね」
「えぇ、ちょっとばかり気が重くて・・・」

アハハと力無く笑う新八に、お妙は複雑そうに微笑んだ。
そして新八の服装へ疑問を抱いた。

「新ちゃん、その格好で行くの?」
「はい、銀さんや神楽ちゃんにはあまり悟られたくなくて。
 ・・・胸が目立たないようにサラシを巻いたんですけど、変ですか?」
「ううん、大丈夫よ。
 ・・・もし万が一あの天パにバレてセクハラされたらすぐに連絡を寄越しなさい。急いで葬りに行くわ」
「アハハ、心強いです」


姉と談笑をする内に幾分か気分も落ち着いてきた。
色々と不安はあるが何とかなるかもしれない。
もう一度いってきますと姉へ告げて、玄関を出た。

///


昨日の欠勤を経て出勤してきた新八に、銀時は何処か違和感を感じていた。


と言っても彼は確かに普段通りである。

出勤した後に朝食を用意して自分と神楽を起こした。
朝食が済めば早々に片付けをし、手際よく2日分の洗濯物を処理していた。
そして部屋中に掃除機をかけてまた昼食の準備。

銀時は神楽に彼の異変について問い掛けてみたが、何も変わっていないと彼女は言う。
拭えない違和感に首を傾げつつ、もう少し様子を見てみる事にする。


この日一日いつも以上に注意深く新八を観察してみれば、今日は彼が何処か大人しい事に銀時は気がついた。

家事をする上での諸動作が何となく緩慢だった。
一通りの家事を済ませた後はソファーの上で膝を抱えてひたすらジッとしていた。
極め付けに、今日は得意のツッコミが一つも飛んでこなかった。

神楽と小競り合いをしていても、新八は全く関与してこない。
此方へ目を向ける事も無くずっと無言だった。

そして、今日は新八と殆ど会話をしていない。


銀時は抱いていた違和感を確信に変え、新八へ詰め寄った。


「・・・なァ。お前何かあった?」
「え?どうしてですか?」
「今日のお前、様子が変じゃねぇか。
 口数は少ねぇし膝抱えたまま動かねぇし」
「別に何でも無いですよ。偶々です」
「ふぅん?」


銀時はどうしてこうも鋭いのだろうか。
依然疑うような眼差しを向けられており、その居心地の悪さに新八の背中へ一雫の汗が流れる。

新八が誤魔化すようにアハハと笑えば、銀時が小さく溜息をついた。

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