銀魂短編

□全ては気持ちの問題なのです
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「〜♪」

往来でふんふんとご機嫌で鼻歌を歌う一人の男。
フワフワと跳ねる銀髪パーマネントが特徴のその人物、坂田銀時である。
昼食を摂った後ふらりと出掛けた彼。
向かったのは行きつけのパチンコ屋であり、今はその帰りである。


今日は珍しく手持ちが増えた。
行き道よりも量を増した財布の中に、銀時はホクホクだ。

普段彼がパチンコへ赴くのには、しっかり者の万事屋の勘定方の手前、何かと気を遣うのだが。
その帰りなんて尚更。
毎度軽くなった懐を嘆きつつ、帰宅するなり勘定方、つまりは新八の手厳しい小言をいただくのだ。
しかし今日のところは心配無い筈だ。
手持ちを増やしたのならば新八だってきっと何も言うまい。

そう考えて銀時は益々浮かれた足取りで帰路を辿る。


///


彼が帰宅途中通りかかった一件の店。
カラフルな花々に彩られたその様子からここが花屋だとすぐに分かる。
いつもの銀時ならば花屋なんてこのまま完全にスルーしているに違いない。
しかし今日は、一段と目立つ本日のイチオシらしい商品と、その横のポップカードに目を惹かれた。

(・・・母の日、ねぇ)

店先で主張しているのは沢山のカーネーション。
赤にピンクに白にオレンジ、鉢植えに花束、そして一本刺し。
色や形態こそ様々だが、今日と言う日に持つ意味合いはどれも同じ。
日頃世話になっている母親や伴侶等、身近の人物へ感謝を伝えるのが主な目的だ。


(・・・)

すっかりその場で足を止めた銀時。
ボンヤリと沢山ある品の中のとある商品を眺める。


それは造花のピンクのカーネーション。
いくつかの花が組み合わさったそれは、プードルフラワーと言われる物らしい。
小さくて可愛らしい外見のそれは値段もお手頃だ。
とりあえず一つ手に取ってジッと見る。

(ふぅん?まぁ別に悪かねぇんじゃね?)

そう思う銀時の頭の中。
浮かんでくるのは勿論あの子だ。


(・・・アイツこんなん好きだよなー。16の男にしちゃァ可愛い趣味してやがるし)

新八は可愛らしい物が好きだ。
日頃何かとその様な物を見つけては、にっこり頬を綻ばせている。

ロクに給料も払えず、プレゼントだって中々買ってもやれないけれど。
こんな日ぐらいは家にそして自分にこんなに尽くしてくれる新八に、感謝を伝えたってバチは当たらないだろう。
幸い今は財布の中だって随分余裕があるのだ。

しかしどうにも照れ臭い。
一体どんな面をしてこれを渡せばいいというのか。
第一、自分が面と向かって感謝の気持ちを伝えるだなんて、新八の方も驚いて戸惑うのではないか。
もしくは何か疚しい事でもあるのかと勘繰られて、あらぬ誤解をされては厄介だ。

そんな事をアレコレと色々考えてはグルグルと悩む銀時。
彼は、このテの事は何よりも不得手なのだ。



しかし、今日はパチンコで勝ってきたのだ。
ではこれはその景品だとでも言って渡せばいいではないか。
然すれば自然な流れでイケる筈だ。


彼なりに考えた完璧なシチュエーションを胸に抱いて、銀時は手に持って眺めていた商品と共にレジへと向かった。
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