銀魂短編

□ほっこり甘味気分
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「銀さん。トリックオアトリート」
「んァ?」

皆で昼食を摂ってから暫く、新八が唐突にそう言った。
和室で今日も今日とてゴロゴロとジャンプを読み耽る銀時の傍にしゃがみ込んで彼をニコニコと見つめている。
更に、ポカンと此方を見上げる銀時の髪をサラリと撫でた。

「ハロウィンですよ今日は」
「あー、そういえば」

毎年そのテの行事には疎い銀時だ。
ハロウィンという海外が主のイベントならば尚更ピンと来なかったらしい。

納得するなり彼は読んでいたジャンプを一旦閉じて傍へやった。
そしてゴロリと新八の方へ寝返りをうちその手を引く。
銀時に促されて新八は素直に彼の腕の中へ横たわった。

新八はやっぱりニコニコと楽しそうだ。
こんなにも機嫌が良いのは銀時からのお菓子を期待しての事なのだろうか。
何だか幼く見える新八が可愛らしくて、銀時は彼のサラサラの前髪を上げて額へキスを落とした。


「楽しそうなとこ悪ィけどよ。今は何も菓子無ぇわ」
「えー」

普段何だかんだとお菓子を買って来ては嬉しそうに頬張っている銀時。
ならば少しぐらい残りがあるだろうと新八は思っていたのだが、どうやらその期待は外れらしい。
それは残念だと新八が眉尻を下げた。


「あーあ、仕方無ぇなァ。好きなだけイタズラしろや」

そして銀時はと言えば、今の今まで大人しく腕の中へ新八を抱いてい筈なのだが。
いつの間にか華奢な新八の身体の上へ覆い被さってニヤリと笑っている。

眼下のその白い首筋へ控え目に舌を這わせると新八が小さく身じろいだ。

「・・・と言いつつ、これじゃ僕がイタズラされそうになってるじゃないですか」
「あー?今更どっちでもいいじゃねぇかよ」
「よくないです。お菓子無いならいいです、諦めます」

それでもまだ新八の首筋や喉元をちゅうちゅうと吸い続ける銀時。
顔や顎に彼のふわふわの銀髪が触れる。

まるで自分へ甘えるていような銀時が可愛らしいので、新八は彼の好きなようにさせる事にする。
少々擽ったいが、まぁこの程度ならばやらしい痕だってつかないだろう。
組み敷かれつつも新八はこの仕方の無い大人の背中を優しく撫でた。


「んじゃ何か甘味食いに行く?」
「え?」

散々吸って気が済んだのか、それとも背中を撫でられる手に気を良くしたのか。
銀時がやっと顔を上げた。
そして両手で新八の頬を包み込むと、超至近距離で彼の顔を覗き込んで誘い掛けた。

幸い今は家計も財布も多少潤っている。
銀時からのちょっとしたデートの誘いに、新八は嬉しそうにニッコリ笑った。

「ふふふ、行きましょ行きましょ」
「よし。何が食いてぇ?ケーキかパフェか団子か。それともこの際全部いくか?」
「アンタに糖を大量摂取させる訳にはいかないんでね。どれか一つで満足しときます」
「えー」

欲張りな銀時に新八が思わず苦笑いする。
不満そうに唇を尖らせる彼の背中を宥めるようにポンポンと撫でた。

「あ」
「ん?」
「あの、僕一つ食べたい甘味があるんですけど、リクエストいいですか?」
「お?珍しいな。いいよ、言ってみろ」

新八がふと何かを思いついたようだ。

新八だって甘い物は好きだが、日頃そんなにそれを訴える訳ではない。
どちらかと言えば普段は銀時の糖摂取を嗜めている手前、自ずと糖から遠ざかりがちだ。
そんな彼のリクエストとあらば、銀時は興味津々だ。
おもしろそうにニッと口角を上げて新八のリクエストとやらを促した。

「駅前にパンケーキ屋さん出来たでしょ?それでね、一回行ってみたいなぁって」
「あぁ、アレな。美味ぇよあそこ。生地はバター多めでボリュームあるし、ホイップも気前良く盛ってあるし」
「・・・やっぱり既にリサーチ済みでしたか」
「ったり前ェじゃん。糖分王にぬかりは無ぇよ」

糖の事となると途端に誇らし気になる銀時。
自身の持っているデータを嬉しそうに披露してみせる。


「まったく、いつの間に行ってきたんですか」
「ちょっと前。パチンコのついでにふらーっとな」
「・・・アンタはちょっと目を離したら甘い物食べてるんだからもう・・・」

新八がじっとりした目線を銀時へくれた。
そして溜息交じりの呆れた口調で呟く。
しかし当の銀時はそんな事は気にしてはいないようでへラリと笑った。

「そうと決まりゃ早速行くぞ」
「ふふ、そうですね。行きましょう」

新八がまたニッコリ笑ったところで、銀時が自分の身体と共に彼の身体も抱き起こした。
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