一次
□コイルたん
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愛そうとすれば逃げていくのに、それにちょっと腹が立って、かまわなくなれば寄ってくる。俺の恋人はそんなやつ。
「なぁコイル、今日の予習やってきたか?俺忘れちまったから見せてくんね?」
「はぁ?予習忘れるとかバカなのかお前。そんなバカに見せるものなんてない。……まぁ、どうしてもと言うなら考えてやらないこともないけど?」
僕は皆からコイルと呼ばれている。物理でコイルをやってから、なぜか呼ばれるようになった。理由はよく分からないのだけれど。
今の会話からも分かると思うけど、僕はものすごく可愛げのない奴だ。人に何かを頼まれたとして普通の返事ができない。
こんな自分を変えたいけれど、素直に「いいよ」って言えるようになりたいけれど、どうしても上手くはいかない。
今日もまた素直になれなくて、憎まれ口を叩きながらノートを渡した。
「ふはっ、ほんっとコイルってツンデレだよな。可愛い奴め。」
「な、何言ってんだよ。バカじゃないのか。無駄口叩いてる暇があるならさっさと写せこのバカが!」
僕にノートを借りに来たこいつは友人の巻野。こんな僕にも呆れたりせずに付き合ってくれる大切な友達。
「へいへい。貸してくれてありがとな。」
どんなに憎まれ口を叩いても、いつも笑って流してくれる、唯一の友達。
「……どういたしまして。」
「おぉ、デレたデレた。」
「デレてない!」
まあ、ほんとに怒っても流されちゃうのは困るけど。