夢物語集

□唐傘
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※キャラ崩壊&京訛りがおかしいので、閲覧は自己責任でお願いしますm(_ _)m





「雨、止まないね…」


小さく呟いても、返事は無くて。
まだ少し震えるそれは、腕の中でじっとしていた 。


菖蒲姐さんに頼まれたお使いの帰り道、突然降りだした雨。
慌てて雨宿りに入った軒下にそれはいた。


痩せ細った小さな虎猫。


その猫は後ろ足を怪我していて、動けないようだった。
私は、寒さからなのか震えている猫をそっと抱き上げて、雨が止むのを待っていた。


止む気配の無い雨。
菖蒲姐さん、心配してるかな…。
しかし、この雨の中を濡れて帰るには、置屋から少し遠すぎる。


途方にくれていると、雨音に混じって近寄ってくる足音が聞こえた。
その足音が目の前で止まると、


「○○はん」


優しい声に名前を呼ばれて。


猫を見つめていた視線を上げれば、目の前には唐傘をさした秋斉さんが立っていた。


「おや、帰ってこぉへんのはどうやら雨のせいだけやなさそうやね。」


私の腕の中の猫に気付いた秋斉さんは、少し困ったような表情になって。


「抱いとったら傘させへんやろから、わての傘に入りぃ?」


私はびっくりして思わず秋斉さんを見つめた。


「連れて帰っていいんですか…?」
小さな声で恐る恐る聞けば、


「そない弱っとる猫を見捨てるわけにいきまへんやろ。それに、見捨てたらあんさんが泣きそぉや 。」


そう言って秋斉さんは優しく微笑んでくれて。


「ありがとうございます。」
そう言って立ち上がると秋斉さんは、


「ほな帰りまひょ。菖蒲が心配しとりますよって。それに、はよせな、猫だけやのうて、あんさんまで凍えてまう。」


そう言って少し冷えた頬を撫でてくれた。


唐傘は二人で入るには、やはり少し小さくて。
それなのになるべく私が濡れないように、傘を傾 けてくれる秋斉さんの優しさに、冷えた頬が赤くなるのを感じた。


「秋斉さん。」

「なんどすか?」

「色々、ありがとうございます。」


迎えに来てくれたこと。
猫を連れて帰っていいと言ってくれたこと。
濡れないように傘を傾けてくれたこと。
秋斉さんの優しさに、自然と感謝の言葉がこぼれた。


すると秋斉さんは突然立ち止まって、


「○○はんが大事やさかい。いつでもわてを頼りぃって言うとるやろ?」


優しい声と共に前髪に触れた秋斉さんの唇。
寒さなんて忘れて、身体中が熱くなるのを感じた。
そのまま唇同士が重なれば、いつの間にか震えのおさまった猫が、にゃぁと小さく鳴いて。


「ほな、はよ帰りまひょ。」


真っ赤になった目元を撫でてくれた秋斉さんは涼しそうな表情のまままた歩き出して。
私も遅れないようについていく。


少し弱まっていた雨は完全に止み、雲の間からこぼれた陽の光が、水溜まりをキラキラと照らした 。


fin.
 

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