NOVEL

□彼女が彼シャツに着替えたら 〜小野瀬葵の場合〜 (過去拍手文No11)
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彼女が彼シャツに着替えたら  〜小野瀬葵の場合〜



その日も、午後から雨が降って来た。


藤守
「うっわーー・・・、ずぶ濡れや〜〜」

外回りをしていた藤守君が、濡れねずみになって捜査室に飛び込んできた。

小野瀬
「おやおや、また派手に濡れたねぇ」


午後のお茶の時間に捜査室を訪れるのが半ば習慣化している俺は、
彼女が休みなのを知りつつも、資料の配達がてらここで休憩をとっている。

小笠原
「今日の降水確率は90%。傘を持たずに出かける藤守さんが悪い」

藤守
「じゃかましいわ、ボケ!」

パーテーションで仕切られた奥のロッカーからタオルと着替えを出す藤守君に、至極当たり前のことを言う小笠原。

昨日は俺も彼女も雨に濡れながら帰宅したから、ちょっとだけ耳が痛い。


・・・実は、それが怪我の功名になったから、俺にとってはラッキーだったんだけどね。



如月
「早く頭乾かさないと、髪に悪いですよ〜〜!」

明智
「如月、お前と一緒にするな。普通は風邪の心配が先だろう」

穂積
「藤守にはそんなの必要ないわよ。ナントカは風邪ひかないから」

藤守
「しつちょーきこえてますよー」

如月
「・・・あーあ、これがカノジョなら、俺のシャツ貸してあげて〜、濡れ髪にナマ脚とか見れちゃって〜、サイコーなんですけどね〜〜」

明智
「藤守のナマ脚は、御免こうむる」

藤守
「皆、ひどい!あんまりだわ!!」



相変わらず、男子校の昼休みのような会話になっていく。
捜査室では、この流れがデフォだから仕方ないか。



小野瀬
「そんなに見たいなら、シャツくらい自分の彼女にお願いして、着て貰えばいいじゃない」

小笠原
「如月も藤守さんも、どうせエア彼女なんでしょ。妄想で好き勝手やってるんじゃないの?」

如月
「カノジョができたら、の話ですよ!!もう!」

藤守
「ええんや!彼シャツ実践してるんは、変態予備軍か、独占欲ギラッギラ男に決まっとる!」

憤りをぶつけるように、藤守君が荒々しくロッカーのドアを閉め、奥から出て来る。


いつもの俺なら、適当に合わせて笑いながら流すところなのだが、
その日はつい余計な言葉が出てしまった。

小野瀬
「ふふ、でも、独占してるんだーって実感できるのも、たまにはイイもんだよ?
ただ裸で抱き合うときと違う気分が味わえちゃったりして」

全員
「・・・・・・」

如月
「うわー、・・・小野瀬さんが言うと無駄にアダ●トー」

藤守
「くっそー!俺もカノジョ作って、絶対にやってやるねんからな!!」

小笠原
「藤守さん、変態予備軍か、独占欲ギラッギラ男に決定」

小野瀬
「まあ、毎回だと普段の部屋着になっちゃう可能性もあるから、Hのアイテムとして使うなら程々にね」


それじゃ、と、俺は席を立つ。

少々、浮かれている自覚はあるものの、まぁ、こんな日もあっていいだろう。
穂積が、凄い目で俺を睨んでいるけど、知ったことか。

如月
「・・・小野瀬さん、どうしたんですか。やけに饒舌なんですけど」

穂積
「あれは、やったんだな。夕べあたり、やりやがったな!!!」


穂積の怒鳴り声と、皆の視線が、出て行く俺に向けられる。

俺はノブを握ったまま振り返り、ニッコリ笑いながら捜査室のドアを閉めてやった。


穂積
「〜〜〜〜〜俺の大事な娘に、不埒なことさせやがってぇ!!あの野郎、許さん!!!」

明智
「い、いかん、皆、室長を止めろ!!」

穂積
「俺にあいつを殴らせろ〜〜〜」




捜査室はいつも元気で賑やかだ。



さあ、さっさと仕事を終わらせて、彼女の待つ家へ帰ろう。

俺は、平和な一日に感謝しながら、ラボへ続く廊下を歩いた。



FIN


〜おまけ〜

小笠原
「俺も帰っていいかな」

明智
「俺は何も聞いていない俺は何も聞いていない俺は・・・明日どうやって櫻井の顔を見ればいいんだ」


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