NOVEL

□パンツ一丁・Tシャツ一枚の秘密
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「アカン・・・、やってもうた・・・」



俺は、後悔と共に、冷蔵庫から出してきたばかりのエビアンを一気に飲み干した。


一息つき、もう一本のペットボトルを手にベッドへ戻る。



そこには、乱れたシーツにくるまり、しどけない姿で眠る彼女。

額に張り付いた前髪をそっと梳いてやっても、目覚める気配は無い。



ここは、トルキア。

ニーナ王女が招待してくれた別荘や。

普段は王族や国賓が使うらしい豪華な場所に、今夜は翼と二人きり。


昼間はプライベートビーチで遊んで、翼の手作りの夕飯を二人で食べて。


気分はMAX!
ベッドに雪崩れ込んだ途端、俺の理性は星の彼方へ飛び去ってしまった。



何度目で翼がオちたのか・・・、よく覚えてへんけど。

短期間に色んなことがありすぎて、俺も止められへんかったんや。堪忍な。




そもそもの始まりは、あのくっそ憎らしいぺったんこ王女が来日したとこから始まったんや。

いきなり、恥ずかしい写真を警視庁のネットにばら撒きやがったと思ったら、
あげく、『捜査室の能力を試す』ために、翼を拉致するとかありえへんし。

その、王女を狙った反政府組織から警護する作戦上、王女の身代わりになった翼は誘拐されかかるし、俺は高速道路を走る車から飛び下りさせられるしで、エライ目にあった。

せっかく王女が帰って、翼を大阪へ連れて行こうとイロイロ計画してたら、今度はオカンの襲撃や。

アニキもアニキで、全くアテにならんどころか、
練りに練った俺の大阪プロポーズ大作戦もぶち壊してくれよってからに・・・

オカンを見送って、さあ、1日これで二人っきりで過ごそうかと思ってたところに、このトルキア遠征ときた。

マトリョーシカの呪いかっちゅうねん。

最低限の下着と日用品だけ買って飛行機に乗り込むはめになり、2回も飛行機乗り継いでようやくトルキアに着いた時は、さすがに地面が揺れよったで。


それにしても、俺と王女がどうやってもマトリョーシカの謎を解き明かせんかったのに、
翼があっさり解いてしまったのは、驚きやったな。
目の前でカラクリが、こう、ポロッと明かされてお宝が見つかったりすると、やっぱ感動モンやね。

室長が、どうしても捜査室に入れたいって引っ張って来たその能力は、前々から何度も体験済みやけど、
翼の、勘っちゅうか、閃きっちゅうか、ホンマ凄いんやなあと感心したわ。


普段は、普通の子やし、ちょっと抜けてる無防備なところもあって(そこが可愛いねんけどな)、俺が守ったらなアカンなーと思わせることの方が多いくらいなのに。



でも、一番、翼を好きになって良かったって思うんは、

王女が子供たちの識字率を上げるための資金が欲しいって言うた時に、顔を見合わせただけで、金塊を返そうって一緒に言えたことや。

俺が、大事にしたいって思ったところを、言葉で伝えなくても同じように感じてくれるっちゅうのが、嬉しいねん。


好きっていう恋愛を超えた部分で、同じ気持ちで生きていけるって、


一生を共にするんなら、絶対大事やろ?


ま、捜査室のみなさんには申し訳ないけど?
俺が皆のマスコットを頂きまーす。


絶対幸せにするからな。

そう誓って、目の前のうっすら開いた柔らかい唇にキスをする。



「・・・んっ、・・・け、じくん・・・?」


「お。気が付いた。・・・大丈夫か?」


「・・・だるくって・・・、ダメ」


アカン、声も掠れてる。


「水、飲むやろ。身体起こすで」


「う、ん・・・」


背中を支えて、力の入らない手に手を添えて、エビアンのペットボトルを持たせる。
ゆっくりではあるが、半分以上を飲んでしまった。

かなり無理させたんやなぁと、・・・反省。


「翼、汗拭こうか。気持ち悪いやろ」


俺はベッドを降りて、お湯で濡らしたタオルを用意し、額と首筋を拭いた。

胸、更に、そっと下半身の間を拭うと、
ピクンピクンと身体がゆれる。


「・・・可愛い。翼。何べんでもシたくなるんは、お前が色っぽ過ぎるからやで・・・」


ホンマに俺を煽る天才やな。おまえは。


「やっ、・・・けんじくんのばか・・・!もぅ、できないよ・・・」


ばかって言われても可愛い。
できないって怒られても可愛い。


「分かってる、もうせえへんって。ゴメン」


「・・・」


潤んだ目で睨むその顔も可愛い。けど・・・、エロすぎる。

俺は慌てて目を逸らし、脱ぎっぱなしで放っておいたTシャツを拾い上げた。

風邪でもひいたりしたらアカンからな。


「俺のでええよな、ほら、手通し」


半分以上意識を飛ばしかけている翼に、Tシャツを着せてやる。


家でも、俺は翼に自分のシャツを着せるのが好きやねん。

・・・ベタで結構。
彼女が彼シャツ1枚の姿は男の夢やからな。


タオルを置き、紅潮した頬を手のひらでそっと撫でると、冷たくて気持ちイイと翼が摺り寄せて来る。


うわ、ヤバイ。
いや、いつもヤバイねんけど。今日は特別ヤバイ。

けど、これ以上やったら、翼が壊れる。
俺はなけなしの理性を総動員して立ち上がった。


自制のために、パンツ穿いとこ。


ベッドの上。翼の横に潜り込み、もうしないって言った俺の言葉に、安心してすべてをゆだねる翼を腕の中に抱きしめる。


「あ〜、幸せやなぁ。・・・おまえも、良い夢見いや」


ちゅっと瞼にキスをして、俺は幸せに浸りながら眠りについた。




翌朝、ぺったんこ王女の襲撃を受け、最大級の恥をかいた上に、
忌まわしくも恐ろしい体験をすることになるとは、


この時の俺は、知る由も無かったのだ。




って、当たり前じゃ。ボケェエ!!!!






FIN


秘密は、拭いただけで、ノーパ・・・フガフガ
(詳しくは別世界参照w)←ちゃっかりワタクシもステマ
.

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