NOVEL

□The Precious Day  〜〜SS omnibus
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ヒロインvision



「初雪だ・・・!」



玄関を出たところで、ハラハラと空から舞い落ちて来る白いものに気付いた。





今日は12月18日。



高校最後の冬休みだというのに、受験生である私はクリスマスやお正月といった楽しいイベントはお預けで、センター試験に向け灰色の毎日が続いている。

今朝は、この冬最初の大きな寒波が到来したらしくてとても寒いけれど、久しぶりに私のテンションは上がっていた。


「お父さん、雪が降ってるよ!」


「ああ、予報ではすぐ止むそうだが、寒いから温かくして学校に行くんだぞ?」


「キレイ・・・。積もればいいのに」


いつものように駅までの道をお父さんと一緒に歩きながら、この冬初めての降雪を楽しむ私。
なのに、お父さんの顔は渋いままだ。


「積もったら交通網が麻痺してしまうだろうが。もうすぐ大学生になろうかというのにいつまでたっても子供みたいなことを言うんじゃない」


「・・・もう、お父さんは全然ロマンチックじゃないんだから」


「何か言ったか?」


「いいえ〜、何でもないでーす」



本当は、こんな寒い雪の日に手を繋いで歩けるカレシが欲しいな〜なんて思うけど、
お父さんには絶対に秘密だ。





地下鉄の駅に着くと。
通勤通学でざわめく人々の中、違う高校の女の子たちの賑やかな会話が聞こえて来た。


「ねぇねぇ!昨日、無くした携帯が見つかったの〜」


「うわ、よかったね。ツイてるじゃん」


「それがさ〜、連絡もらって受け取りに〇×警察署に行ったら、すっごいカッコイイお巡りさんが対応してくれたんだ!!」


「え〜、警察官でしょ?カッコよく見えただけじゃないの」


「と思うでしょ?なんと金髪に碧い眼。しかもめっちゃ背高くって、制服が超似合ってたんだよ!!」


「うっそ!?いいなぁ、そんなお巡りさんならタイホされてみた〜い!」


「写メってないの?」


「いきなりお巡りさん相手に写メはヤバいでしょ。欲しかったけどさすがに我慢した」


「じゃ今日見に行こうよ!!」



金髪碧眼か〜〜。ハーフのお巡りさんなのかななんてぼーっと聞くとはなしに聞いていたら、私の隣でお父さんが握り拳を震わせている。


「あれ?お父さん、顔色悪いよ?どうかしたの?」


この寒さだ。風邪でも引いちゃったのかなと心配した私に、いきなりお父さんの説教が始まった。


「・・・翼。お前、〇×警察署なんかに行くんじゃないぞ!世にもおぞましい生き物が生息しているからな」


「え〜、急に何言ってるの、もう。心配しなくても補導されるようなことしてないよ」


「とにかく、絶対に近づくな!!何をされるか分かったもんじゃない!」


鬼気迫る表情で力説するけれど、理解不能な内容だ。


「・・・お父さん、お巡りさんって都民の味方でしょ。その言い方じゃまるで〇×警察署が魔物の住処か地獄みたいに聞こえるよ?」


「まるでじゃない!そのものズバリだ!!よりによってどうしてあんな盗人が警察官なんかに・・・しかも、キャリアである以上ヤツは職場を転々と変える性質を持っている。そうだ、危険地帯は念入りにチェックしなければ・・・」


「あ、電車来た!私、先に行くね〜」



「お父さんはお前だけは絶対守ってみせるぞ〜〜〜、翼〜〜!!」




まだブツブツ言ってるお父さんを放置し、私はホームに向かって駆け出したのだった。



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