暗殺者
□血で繋がれる魂
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世界を危うく保ち、そして滅ぼす何かを指し示す写本。
私にはさっぱり理解できなかった。
しかし、今は亡き父から未来へ残すように伝えられた家宝。
それを守るためにこの屋敷には守護者が大勢いる。
私の一族はこの国でもっとも高貴な家柄にして、代々この国の守護者と呼ばれる騎士たちを束ねている。
いずれは私の子供や孫たちがこの国を、家を、そして宝を護っていくのであろう。
「あの…夜遅くにすみません…」
浮浪者のフリをして門番に近づく。
バカな奴らだ。二人ともこっちに近づいてくる。
もう3歩。
2歩。
あと1歩。
シュッ!
懐からナイフを二本素早く取り出し喉に突き刺す。叫び声もあげられない。見つかるのは明日の朝だろう。素早く、静かにその場を走り去り中に入る。
洒落た階段や壁の装飾は俺からすればただ登りやすくしてくれているだけだ。とっとと登って巡回中の守護者どもから隠れながら進み、寝室までたどり着く。静かに寝ている初老の男がいた。終わりだ。
「守護者ロットの暗殺…成功」
後は写本を取り戻すだけだ。
写本をベルトにしまい、窓から出る。無駄に広い庭を走り抜け、脱出する。
筈だった。
ヒュン!
トッ!
「ぐぁ…!」
足に矢が突き刺さった。動けない。
守護者が近づいてくる。斧でとどめを刺すつもりのようだ。
(我が息子よ…シュウよ…暗殺者となれ…!)
斧が振り下ろされる。俺はケン。暗殺者だ。