正義ノ味方

□悪を倒せば必ず正義であるか?
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少し高いビルの屋上は風を遮るものが無い分地上よりも寒く感じた。真冬でないにしろもう夜は随分と寒くなっている。
手のひらに息を吐く。吐く息は白くなっていた。
さっき殴った男のものか、倒れていた男のものかわからない血が手の甲についている。特に気にならないが、病気なんかが感染ると困るので拭いておいた。

「最近多いな、恫喝。」

カイは独り言を呟いた。
今ので今日は三人目だ。もっとも、町中を探せばいくらでもいるのだろうが。騒ぎ声と悲鳴がBGMのようなこの街で生活するのに慣れつつある自分が可笑しかった。
カーボン製のワイヤーとおもりの分銅、メジャーの巻き取り機で作った武器や、ナイフなんかを常に携帯していなければ危ないような街で、だ。

「…ん」

下の大通りで一人の男が誰かを脅している。見てしまったので、助けることにした。

「よっ」

さっきのワイヤーを伸ばし、ビルの縁から跳んで、地面が自分を引っ張る力に身をゆだねる。恐怖などという感情は既に麻痺していた。
かなりのスピードがついてきたところで街灯にワイヤーの先を投げ、絡ませる。ちょうどターザンのようにスイングし、男を後ろから蹴りつけた。

「ガハッ!」

凄まじい勢いの一撃が決まる。吹っ飛び、壁に叩きつけられた男は動かなくなった。死んだかもしれない。

ーーーー!

いきなりの後頭部の衝撃。今の男の仲間が殴りつけてきたらしい。何か訳の分からない事を叫んで暴れている。

「って…クソっ」

痛みで一瞬フラついたが問題なかった。冷静さを欠いている男の攻撃を避けるのは容易い。隙をついて顔面を力一杯蹴りつけた。
鼻血を出して倒れる男。ゴミ溜めの中に突っ込み、いっそう醜い姿で立ち上がった。懐からナイフを取り出し、切りかかってきた。さっきの血を思い出して気分が悪かった。
回避しつつ、男が大振りになるのを待つ。

「喰らえ!」

男が思い切りナイフを振り上げる。それを待っていた。

ミシッ

スニーカーのかかとが顔面にめり込んだ。男はそのまま倒れた。


さっきの道具を街灯から外す。
そして男の持ち物を調べた。金があれば少しもらおうと思ったからだ。

期待ははずれた。しかしもっと重大なものを見つけた。殺人ショーの招待状だ。


見てしまったから助けることにした。
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