読み切り

□愛しき星の花咲けば
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小賀とは中学からの付き合いだが、こういう所は昔から嫌いだ。どうして俺がこいつの面倒を見なくちゃいけないんだ。腹立たしい。

「まあまあ。神田、車来たし、とりあえず落ち着こ?」

光村…!この癒しキャラめ!何で男なんだ!

「神田はみっちゃんに弱いなァ」

「黙れ無能」

「ヒドくね?」

小賀は馬鹿にされたところで動じる奴じゃない。むしろこいつが動じるようなことがこの世に存在するんだろうか。教えてほしいくらいだ。

志場先生の誘導で入ってきた車はちょっと大きめのファミリーワゴン。10人くらい乗れそうなやつだ。そのあとにもう少し大きめの車が2台入ってきた。
ファミリーワゴンのドアが開くと、まず降りてきたのはパリッとしたスーツの男。清潔感があって、意外と若い。

「お早うございます。STAR's CROWNマネージャーの若杉と申します。本日はよろしくお願いします」

「実行委員責任者の志場です。本日はご足労いただきましてありがとうございます。こちらこそよろしくお願いします」

大人の挨拶が終わったところで、志場先生の後ろで控えていた俺達もそれぞれ挨拶した。若杉マネージャーは短いながらもきちんと挨拶を返してくれて、好感が持てる。

「早速ですが、控え室にご案内をお願いします。メンバーからは移動が済んだところで正式にご挨拶させていただきますので」

若杉マネージャーはそう言うとワゴンの中を覗き込み、中の人間に手招きした。それを合図にまずガタイのいい黒服が二人降りてきて、続いて小柄な少年三人と黒服の最後の一人が降りてきた。少年達は少し地味な服装で、三人それぞれ違うデザインの帽子を深々と被り、一人はきちんとマスクを着け、一人は大きめのメガネをかけ、もう一人はマスクを顎までずらしてガムを噛んでいる。黒服と少年達はくすりとも笑わないので、若杉マネージャーがひどく浮いて見えた。

「こちらです」

今をときめく人気アイドルという大物を待たせぬよう、志場先生が先頭立って誘導する。俺達も倣ってメンバーのサイドについた。SPがちょっと睨んできたが、知るか。それが俺達の役目なんだよ。
少年達は各々違う髪色をしている。小賀が付いている先頭のマスク少年は金髪、リーダーの彩華怜(サイカレン)。光村が付いている最後尾のメガネ少年は桃色、天然キャラの榮那莉緒(エイナリオ)。そして、俺が付いているガム噛んでる奴が黒髪、汐羅琉依だ。毎日毎日、兄貴のエンドレスDVDと暑苦しい語りのせいで覚えてしまった。俺は全く興味ないのに。

俺達はメンバーを職員用の会議室に案内した。舞台になる体育館に近く、生徒が寄り付かない場所で広さもあり、控え室に持ってこいだ。

「それじゃ、メンバー。ご挨拶だ」

マネージャーの指示で少年達が帽子やマスクなどを取る。汐羅琉依は噛んでいたガムを若杉マネージャーから渡されたティッシュに出して、そのままマネージャーに渡した。いや、自分で持っとけよ。

「本日はお世話になります!STAR's CROWNの彩華怜です!今日は精一杯パフォーマンスしますので、サポートよろしくお願いします!」

さすがリーダー。金髪でチャラそうな見た目なのに、かっちりした奴だ。元気よく挨拶すると深々と頭を下げ、またビシッと姿勢を正した。

「榮那莉緒です。従兄弟がこの学校の一年生なんで、どんな所か楽しみにしてきました。ちょっとしたサプライズにもなるので嬉しいです。よろしくお願いします」

桃髪は天然キャラらしい、少しずれた内容の挨拶をするとふんわりと笑ってお辞儀をした。何となくだけど、光村と似ている感じがする。癒しオーラが出てる。

「汐羅琉依です。頑張ります。よろしくお願いします」

汐羅琉依…!テレビで見たときとのギャップがありすぎる。なんかもっと甘えたなキャラじゃなかったか?笑ってるみたいだけど笑ってるかこれ?喋り方も普通だし、お辞儀も軽くペコッとする程度。兄貴が見たらショックを受けそうだ。

「そして、彼らがSPの、右から佐伯、村瀬、戸田です。控え室の出入口の警備、メンバーの移動の際など安全確保のために行動します」

SP三人が、よろしくお願いしますと言うが、頭は下げない。これも警護中だからなのかもしれない。


 
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