読み切り

□I'll become your friend once again.
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卒業式が間近に迫った日、俊成の合格発表があった。オレは関係ないのに付き添いでついてって、受験票を握り締めて張り出された番号を睨みつける俊成の横で、先に番号を見つけていた。教えてやってもいいんだが、負けず嫌いの奴だから、きっと自分で見つけたいに違いないから黙っていた。さっきから唸りながら探している横顔がおかしくて吹き出しそうだ。周りから見れば仇でも睨んでるような顔にビビるんだろう、実際、女子だけじゃなく野郎どももひいている。

「あった!!あったぞ、大志!」

拳を握ってガッツポーズをしたかと思えば、オレの肩を掴んで揺すってくる。でかい声で叫ぶもんだから、周りがまたひいてる。不意にぐいっと引き付けられて、強く抱きしめられた。ああ…ドン引きされている。女子の小さな悲鳴も聴こえた。

「受かった…!ありがとう、大志!」

「どういたしまして…つーか苦しいから離してくれ」

「ん?あ、悪ぃ」

俊成の腕から解放されて、よれたコートを直す。俊成もグシャグシャになった受験票を、今さら丁寧にしわを伸ばしてポケットに入れた。

「あー緊張したら腹減った!飯食いに行こうぜ」

さっきとは打って変わってにこやかな俊成の姿に、周囲の女子が見とれている。オレはそれが少し面白くない。コイツがかっこいいのは認めるが、まだ女っ気はなくていい。

「駅前にラーメン屋があったな」

「おし!今日は俺の奢りだ。好きなもん好きなだけ食え!」

「へぇ。その言葉忘れんなよ」

そんじゃ、合格させるために勉強みてやった礼をしっかり頂戴しますか。





「すいません、替え玉ください」

「おーい、そろそろ腹一杯じゃねぇの?」

二回目の替え玉をスープに入れて、啜りはじめたオレの横から、俊成が頬を引き攣らせながら言ってきた。ずるっと啜りきってちゃんと咀嚼してから飲み込み、オレはさらにチャーシューを追加した。

「好きなもん好きなだけ食っていいんだろ?ここのラーメン旨いしな。あ、煮玉子もうひとつ」

「旨いけど…お前そんなに食えたっけ?」

「お前こそそんなに食わなかったっけ?」

ニッと笑って言ってやると俊成がぷるぷると震えた。軽く頭に来たみたいだ。キレはしなかったけど、ムスッとして替え玉を注文して、オレの器からチャーシューを二枚奪っていった。

「おいコラ、オレのチャーシュー」

「いや、コレは俺のチャーシューだ」

お前はジャイアンか。別にいいんだけど。
替え玉が来て、ラーメンを啜る俊成の横顔に見入ってしまう。こうやって、二人で飯食ったりすんのも、あと何回ぐらいだろうか。学校の昼飯は中学からずっと一緒だったし、たまに互いの家に泊まった時は晩飯も朝も一緒だった。ふざけて、笑いあって、何でも話し合った。高校卒業したら別々になるなんて、まだ、想像できない。でも何だろ…何か寂しい。

「食わねぇんなら、俺が食うぞ」

気づいた時には、オレが頼んだ煮玉子の片割れが俊成の口の中に放られていた。

「もう食ってんじゃん!」

「ボーッとしてっからだろ。どうしたんだ?」

どうしたと尋ねられたところで、男同士で寂しいなんぞ言えるわけもなく。

「お前も大学デビューとかすんのかな」

そんでサークル仲間と合コン行って、可愛い女子と仲良くなって、付き合ったりすんのかな。

「ハァ?それ言ったらお前は専門デビューかよ」

「何だそれ。ダセェ」

へらへら笑ってるオレ。ダサすぎる。
何か違う気がする。もっと、ちゃんとしなきゃ。親友って、どうやるんだっけ。





オレん家の前までオレを送ってくれた俊成と別れると、どっと疲れが襲ってきた。まだ誰も帰って来てない家でさっさと風呂に入る。湯舟に肩まで浸かってぼんやり考えた。



オレは本当に卒業できるんだろうか?





 
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