小説
□いつもの朝
2ページ/2ページ
「あーおいしかった!ごちそうさま!」
朝の時間は本当にあっという間で、
食べ終わるとあっちゃんはバタバタと支度を始めた。
「あれ?みなみ、トイレの電球切れてる。」
「うん。今朝切れちゃったみたいで、
あっちゃんが帰ってくるまでに替えとくね。」
「みなみは、危ないからだめ。俺が替えて行くよ。」
「でももう時間…」
「大丈夫。それに、みなみが今日1日不便な思いしなきゃいけないだろ?電球どこだったけなー?」
優しいなぁ…
イスに登って手際よく電球を替える彼を見つめながら
私はそんなことをぼーっと考えていた。
「じゃっ!みなみ!行ってくるよ!」
はっ!彼はもう玄関で靴を履いていた。
「あっ!あっちゃん!あっちゃん!ケータイ忘れてるよ!」
「あっ、ありがとう。………でも、みなみも忘れてるよ?」
「いや、忘れてるわけじゃないけど…」
彼の手が私の後頭部に伸びたかと思うと、
唇に柔らかいものが重なった。
「じゃあ、行ってくるよ。」
「…行ってらっしゃい。」
「…みなみ、顔紅い。」
どこか挑発的な言い方といたずらっぽい笑顔を残して
あっちゃんは今日も仕事に出かけていった。
あっちゃんとの結婚生活をはじめてそろそろ1年。
でも、行ってきますのキスはまだ恥ずかしくて。
おわり。
..