小説

□いつもの朝
1ページ/2ページ


「朝だよーほらー起きて起きて!」

「………」

「ほら!遅刻だよ遅刻!!」

「ん…」

「あっちゃん!!」

「もうちょっと…」

ダメだ、今日は動く気配すらない。
仕方ない。朝ご飯作戦に移るか。

「ほんとに良いの?
 今朝はトマトのカルパッチョあるんだけどなー。」

布団がごそごそと動いた。反応ありだ。

「特製野菜ジュースも作ってあるんだけどなー。」

ようやく体を起こして、寝ぼけた顔で私を見つめる。

「どこ?」

「どこ?じゃないの。早く着替えて!」

もう、ほんとに寝起きが悪いんだから。

…とは思いつつ、こんな彼を毎朝あの手この手で起こすことに
私は密かな喜びも感じていた。


「みなみ!これうまい!」

「本当!?」

彼は朝からたくさん食べるから、朝ご飯作りはちょっと大変だ。
それでも、私の作った朝ご飯を「うまい」って言ってくれるだけで
早起きの苦労なんて一瞬で報われる。

それに、朝ご飯は彼と話せる貴重な時間。
あっちゃんは夜は遅くなる日が多いから。


「あっちゃん、」

「なに?」

「あのさぁ、今度の週末、映画行かない?」

「みなみから映画行こうなんて珍しいな。なんか見たいのあるんだ?でもONE PIECE劇場版って今やってたっけ?」

「違うし!…これ、一緒に行こう?」

恋愛映画のチケットを遠慮気味に渡した。

「へぇーみなみがラブストーリー見たいなんて。
 みなみも女の子になってきたんだなー」

「もともと女の子です!!」

わざとふくれた顔をして見せた。

「あはは、ごめん、ごめん。じゃあ土曜一緒に行こうな。」

でも、もし私が前より女の子になってきてるのだとしたら、
それはあなたのせいだから。

.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ