*旅に出る。

□…なんだとぅ。
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「ゆーとーっ!」


…んー。


「ゆーとーっ!!」


…んー。面倒…。


「ゆーとーっ!?」


…朝からうるさいなぁ。
まだ…。


…。


「日が出てない…っ!?」
身を起こし、窓の外を見てみた。
街の灯りも街灯だけで、空は黒一色と星だけの夜。


「ゆーとーぉっ!!?」
「何!?うるせぇよ!」

これはこれは、夜中にうるさい母である。
ドアを勢いよく開け、俺の名前を大声で呼ぶ…


…真面目に迷惑だな。おい。

「なんだよ…うるせぇなぁ」
だが母は、真っ白な天井を見上げている。
何この人…。

「おーい…」
俺は起こした体をまた寝かせる。
と 同時に


「アンタまた…電気消さないで寝たわねぇぇ!!?」
「だからうるせぇよ!!つか、それだけ!!?」
「違うわよ!この母が、こんなごときでアンタを起こしたことある!?」
「こんなごときって言うぐらいなら、叫ぶなよ!!」
いつの間にかまた、身を起こしていた。
あー…目覚めちゃったじゃんか。


「で…何か用ですか…」
欠伸混じりで母に訪ねる。失礼だとは思ったが、こんな時間に起こされたら欠伸もでる。

まだ…3時だぞ?


「用はありありよ!」
夜中だってのにパジャマ姿ではないし、元気はつらつだし…

何なのこの人…。


「悠人…よく聞きなさい」
ベッドに腰をかけている俺に接近し、



「旅に出てき―」
「嫌だ」
「なんだとぅ?」
母の言葉を遮って断る。
「いや…なんだとぅ?じゃなくて。むしろ、こっちが言いたいわ」
「え?いやいや…今日ね。悠人の誕生日」
あー…そうだね。とか思い、頷く。
「今日アンタ…16歳」
「そだな」
またもや頷く。

「だから―」
「嫌だぞ」
「なんだとぅ!?」
何この人…この反応…。

「悠人君ー…」
「あんだよー」
母を見つめる。
こんな言動が子供っぽくとも、若くて美人な自慢の母である。
というのは、ご近所のさんがよく言ってるからだ。


「じゃあ、行かないのね?」
即、頷く。4回ほど。
「でも勇者になるんだよ?」
16歳になったら勇者になるなんか、一度も言った覚えはない。ので、頷く。
「大変な目に遭うよ?」
首を傾げる母。長い茶色の髪が、さらっと垂れる。
「知らねーよ…もう寝るからな?俺、もうねみぃもん」
そして、俺は体を横にして、また夢の中へ。


「もー…。帰ってこれなくても知らないからね!」
そう言い残して、母は部屋を出て行く。


きっと寝ぼけてたのかな…。
重症だな…。



…あ、部屋の電気。
消さねーと…。
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