SHORT

□一人じゃない
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広い広い屋敷の中。

広い屋敷には、メイド達のバタバタとした忙しそうな足音しかしない。


「暇だなぁー」


(今日はヴァン先生との稽古もないし…)


そう頭で呟きながら、開いた窓の外を見る。
こう思うと、俺って孤独だよな…。
屋敷から一歩も出られない生活。
別にこの屋敷が気に入らない訳じゃない。
メイドや使用人は世話を焼いてくれるし、稽古も出来るし、物騒じゃねぇし。
それに───。


「よぉ、ルーク」


「うぉわっ!」


丁度今考えていた相手が突然目の前に出てきた事に、俺は声を上げた。


「…ガイっ!窓から入って来んなっていつも言ってんだろ!?」


「この方がサプライズみたいでいいだろ?」


あはは、と笑いながら言うガイに俺は深く溜め息を吐く。


「…で、なんで此処に?今日は来ないんじゃ無かったのか?」


ガイに会って、一番に思ったことを告げる。
ガイは今日、休みの筈だ。
使用人のガイにとっての貴重な休日にも関わらず、何故屋敷に…。
俺は疑問に思っていた。


「お前が寂しがってるんじゃないかと思ってさ」


「…っ誰が」


ガイは優しい。
屋敷に閉じ込められたような生活の俺をいつも構ってくれる。

──でも、ガイが居なくなったらどうする?

当たり前のようにガイと過ごしてきた毎日。
その当たり前の毎日にガイが居なくなったら?

何故か分からないが、突然頭を過った言葉。


ガイが居ない世界なんて考えられない。
考えたくもない。
父上や母上を亡くしたってガイが傍に居てくれる。
でもガイが居なくなったら俺は…?

一人になってしまう───。



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