飴乃寂


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監視記録一日目。午前十時二一分。


並盛商店街で他校の女生徒達と立ち話をしているところを発見。

ターゲットはどこかへ向かう途中らしく、五分後には時計を見て彼女達と別れた。



十時三二分。ティッシュ配りのバイトをしている女をナンパしている模様。

ティッシュに入っている広告の裏にアドレスらしき文字を書くと、すぐに別れる。



十時四十分。ペニーとかいう小さなスケボーに乗ってどこかへ向かう。

追跡に専念する為、記録は後に回す。



十一時二十分。一度見失ったが、合気道道場でターゲットを発見。

そういえばリボーンさんとの修行で、道場巡りをさせられていた。この道場もその一つだろう。

胴着姿のターゲットが門下生達と一通り手合わせした後、特に変わった様子もなく道場を出る。



十一時五十分。マンションに帰宅。

自宅ではなく俺の部屋を合鍵で堂々とドアを開け、入室しかける。



「あ。今日から暫く、ご飯いらないんだった」



ターゲットは俺が事前に連絡したことを思い出したらしく、ドアに鍵をかけると誰かと端末で話し始めた。

ここからは内容は把握できないが、ナミーズという単語が聞こえた。次の目的地らしい。

先回りして、俺もそこで昼飯にする。



十二時三十分。ターゲットはオカマ野郎達と喋りながら食事をしている。

全員でメニューを回し食いしているらしく、衰えないハイテンションと合わさって、見ている方はドン引きだ。

直接的な粘膜のやり取り(接吻)がないだけで、昔のシャマルとターゲットが重なって見えた。これを延々と見続けるだなんて、何の拷問だ。



二時ちょうど。オカマ達と散々喋り倒した後、漸く店を出たターゲットが並盛駅に入っていった。

見失わないよう、再び追跡に専念する。



電車に乗って十五分後。ターゲットは白沼駅という駅で降りると、迷いない足取りで駅を出た。どうやら初めて来た場所ではないらしい。


駅を出れば並盛商店街と同じように、顔見知りらしき人間と挨拶を交わしながら進んでいく。声をかけるのは、やはり見目の良い人間ばかりだ。


その中の一人に誘われるまま甘味屋に入っていったが、羊羮を買うとすぐに出てきてどこかへ向かう。一体どこに行くのだろうか。



二時四十分。ターゲットは目的地らしい一軒の真っ白い家に到着。

呼び鈴を鳴らして出てきたのは、家と同じ真っ白な頭をした年上の男だ。並盛では見たことないやつだ。

そいつはターゲットから受け取った羊羹入りの袋を持って、ターゲットを家へあげた。



「…………」



こっそり中の様子を伺いたいが、見つかるリスクが高くなるし、今日は初日だ。

あの二人がいつ家を出てくるのか分からない以上、監視に徹することにしよう。



「………………ヒマだ……」



タバコを吹かしながら双眼鏡でターゲットの家を監視しているが、中から人が出てくる気配はない。






二十二時三十分、あれから約八時間後。家からターゲットと男が出てきた。

足元に散らばった大量のタバコを適当に踏み潰して、慌てて追いかける。

男は紳士的にも、ターゲットを駅まで送っていた模様。男は改札口でターゲットと別れた。

二人の関係は、未だ不明。



終電に乗って並盛駅に戻り、マンションへ行く道すがら、ターゲットはずっとマイクつきイヤホンを繋いだ端末をいじっている。さっきの男とやり取りしているのだろうか。



「はい!恋沙汰以外なら何でもお知らせ!イチノでございまーす!」


「ごめんなさい、それ以上の情報は入ってきてないんだ。何かあれば、後はメールでお願いします」


「シャルルの限定版なら、隣町のデパ地下で電話注文できますよ」



否。どうやらコールセンターの受付の如く、情報屋の活動をしているらしい。

ペニーで滑走している間もそれは続いていたらしく、俺が追いついた頃―――ターゲットが自宅のドアを開ける前まで、誰かと通話をしていた。



ターゲットは十一時十分に帰宅。

このまま日付が変わるまで動きがなければ、今日の監視は終わりとする。




 
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