カラスの五重唱
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「副会長に会った?」
「うん。もう騒ぎ起こすなって釘刺されたんだから、お前ももう学校でむちゃくちゃするなよ!?」
帰宅して俺の部屋で武器の手入れをしていたリボーンに念を押すも、リボーンは了承の返事をせず話始めた。
「俺のところには、穴屋明徒ってやつが注意しに来たぞ」
「えっ!?お前また学校にいたのか!?」
「まあな」
それに明徒って名前も、どこかで聞いたことがあるような……?
うーんと首を傾げると、リボーンはバラバラにした銃を組み立てながら息をついた。
「生徒会の三年生だぞ。了平みたいな頭してる男だ」
「あっ、もしかして議長のあの人!?」
そういえば学校で副会長も、議長の明徒って言っていた気が。
「………っていうか、どうして生徒会の人達がお前の所にまで注意しに行くんだよ!?」
一応こいつの存在は、学校では秘密なのに。
知ってるのは獄寺君や山本、京子ちゃんといったいつものメンバーに、ヒバリさんくらいなのに。
「単純に、騒いでるお前達と一緒にいるところでも見たんだろ。もっとでかくなってから入学して来いって言われたしな」
「当たり前だろ、お前はまだ赤ん坊なんだから……」
いくら黒いスーツを着こなして本物の銃を持ち歩いていても、外見は立派な赤ん坊だ。
もしかして副会長が言った部外者は巻き込むなという台詞は、中学生の危ない遊びに赤ん坊まで巻き込むなという意味かもしれない。
「そういえばお前、自分の学校の生徒会がなんて呼ばれてるのか、知らねーのか?」
「へ?呼ばれてるって………生徒会は、生徒会だろ?」
他になんて呼ぶのだろうか。
「並中の生徒会にいる五人全員、同じ時期にイタリアから留学してきた成績優秀者達なんだぞ」
「えっ、イタリア!?」
イタリアと聞いただけで嫌な予感がするのは、察してほしい。
「おいまさか……その人達もマフィア、とか……?」
「さあな。あいつらが来日したのはお前も並中に入る前で、俺も知らねえ。偶然だ」
「そ、そっか。だよな……」
リボーンが来た後ならまだしも、その人達は俺がリボーンと知り合う前から並中にいた人達だ。
イタリアから来たことも、ただの偶然か。
「お前も会長の名前くらいは覚えてるだろ?」
「た、たしかイタドリ妃……さん?」
「そうだ」
みんな考えることは同じなのか、入学式の後は例の会長の名前を調べて友達に教えあっていたから、会長の容姿や名前だけは覚えていた。
「名前の通り、妃はクイーンで通ってるからな。そいつが束ねる組織だから、生徒会の連中はクインテッドって呼ばれてるんだぞ」
「クインテッド?」
「五重唱って意味だ。音楽の授業にも筆記試験があるんだから、しっかり覚えとけ」
「わっ、分かってるよ……!」
どうして音楽の授業にも書き覚えるテストがあるのか、不可解でならないけど。
ガショッと組み立て終えた武器をケースに仕舞いながら、リボーンは続ける。
「他にもクイーンのハーレムとか、女王と従者達とか好きに呼ばれてるが、並中はどうしてもヒバリの風紀委員会の方が目につきやすいからな。暴力沙汰がないからその存在も薄いぞ」
「普通は委員会絡みで暴力沙汰とかないんだから、生徒会が健全な証拠だよ!」
存在が薄くてなんだ。有無を言わせず咬み殺すヒバリさんより、ずっと良い人達じゃないか。
「そこが面白いところなんだけどな」
「はあ?」
今日のリボーンは、なんだか支離滅裂だ。
訳が分からなくて聞き返すも、リボーンはぴょんと立ち上がって出口へ向かう。
「お前も生徒会の奴等を見かけたら、チェックしておけよ」
「チェックって……何をだよ?」
「弱点とか弱味とかだな」
「脅す気なの!!?」
まずい。リボーンの次の標的は、その生徒会らしい。
「お前頼むから生徒会の人達にまで、マフィアとか変なこと吹き込むなよ!?次問題を起こしたら真っ二つにされ、……!!」
言いかけてからハッとして、口をつぐむ。
するとリボーンは足を止め、くるりと振り返った。
「分かったぞ」
帽子の下から見えた、口許のニヤリ。
絶対に分かってないだろお前………!!!
何もしてないのに、やっちまった感に襲われる
(後悔は先に立たず)