飴乃寂


□03
4ページ/6ページ


「失礼します、ヒバリさんいらっしゃいますか!」



三時限目が終わってすぐ、応接室に行ってドアを開ける。


ひたすら書類に向かっているヒバリさんが一度だけ手を止め、こちらを見た。


一瞬目があって、すぐに顔が下を向く。


おぉう、見れば見るほどイケメンだ。



「今朝の生徒か。なんの用だい?」


「わっ、覚えててくれたんですか!?」



やっぱり今朝のあの時も、目があってたんだ!



「見慣れない金髪だと思っただけだよ」



拒否はされなかったのでそのまま入室し、部屋の一番の机に向かう。



「あーこれ、こう見えても地毛ですよ?元々黒かったんですけど、前の学校で水泳部にいたんで、プールの塩素で色素が抜けちゃったんです」


「そう。なら制裁は下さないよ」


「やだなぁ、物騒ですねー」


「この学校の風紀委員長は僕だからね。校則を破れば、それ相応の罰を与えるのは当然だよ」


「真面目なんですね」


「別に」



ああ真っ黒な髪も、きっちり着こなされた黒い学ランも素敵だ。


獄寺が洋風の美形なら、ヒバリさんは和風の美形。


ジャンルが違うので比べるのは間違ってるかもしれないが、レア度を比較したら、やはり彼の方がレベルが上なのだろうか。


もう雰囲気から洗礼されているのを感じる。



「それより、君はまだ僕の質問に答えてないよ」


「ん?」



ピタリと、再びペンを持つ手が止まった。


ヒバリさんのいる机の手前で立ち止まると、吊り上がった猫目が、正面のボクを見上げる。


ああくそもう!!端末さえあれば、迷わず撮ったのに!!


上目遣いもなんて可愛らしいの!?


なんで女に生まれて来てくれなかったんだ!


女だったら遠慮なく抱きついて、すぐお友達になったのに!



「なにをしに、この応接室に来たんだい?」



あ。ピリッと、雰囲気が鋭くなったのが分かった。


あの有名なトンファーを出されちゃ、ひとたまりもない。


慌てて口端をあげて、ここに来た理由を述べた。



「え、えっとですねぇ。ボクもヒバリさんと同じ、風紀委員に入りたいなぁ………なんて……」


「………」


「ダメ、ですか?やっぱり……風紀委員って男子ばっかって聞きますし……」



美形の近くにいたい、美形の傍にいたい。


ヒバリさんの、獄寺の、ツナの、山本の、了平さんの、持田先輩の、京子ちゃん、花ちゃん、エトセトラ。


みんなとお友達になってこの学校生活を、潤いきった憩いの場に!


勉強なんて二の次どころか、十の次でいいもんね!


ボクは彼らと触れ合うことに、全力を捧げる。


笑顔を固定したままヒバリさんの様子を伺っていると、ヒバリさんはおもむろに机の引き出しを開け、風紀と書かれたアレを差し出した。


一瞬感じた寒気のような、刺々しい雰囲気は消えている。



「そういうことなら構わないよ。やるからには、ちゃんとやってね」


「もちろんですっ!!」



腕章を両手で受け取り、よっしゃあああぁと達成感でうち震える。


もうボク、怖いものないかも!!




 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ