飴乃寂
□03
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「ツーナ君!」
「あ、おはよう品臣さん!」
「おはよう。次の数学、ボク達あてられるんじゃない?」
「あ゙ぁっ!!すっかり忘れてた!!」
キンコンと授業を終えるチャイムを聞き流していると、今日初めて会う品臣さんが、やけに笑顔のまま爆弾を投下した。
「ボク、次の設問は自信あるんだ。教えよっか?」
「本当!?ありがとう!」
忘却の彼方に追いやっていた数学の課題に頭を抱えると、そこにすかさず救いの手が。
その手を遠慮なく掴んで早速数学の教科書とノートを広げると、他のクラスメイトと喋っていた山本が近づいてきた。
「うっス!数学の課題やってんのか?そういや俺もやってくんの忘れてたのな〜」
「じゃあ山本も、一緒にやるかい?」
「いいのか?やり!じゃあ今、ノート取ってくんのな!」
自分の席に戻ってノートを取りに行った山本を見送り、俺の席の前に立つ品臣さんを見上げる。
「あれ?品臣さん、山本と仲良かったっけ?」
「うん。挨拶くらいしかしたことなかったけど、君達と退学くらいかけた時に喋ってみたら、仲良くなれたんだ」
「あぁ、あの時か……」
浮かぶのは苦笑い。
あの日。彼女の本性を知ってしまったあの出来事は、忘れられない。
そういえばなんとか退学免除され時、山本が一番に心配して来てくれたっけ。
「ふっ。あのマイナスイオンは全身からにじみ出てるに違いないよ。野球美少年恐るべし……ふへへっ」
「山本からマイナスイオン出てるの!?」
しまった、地雷を踏んでしまったか。
急に息が荒くなり、この世の恐ろしいものを見たかのように深刻に呟く品臣さんだったけど。
「よっしゃ、頼むぜ品臣!」
「うん、頑張るね山本」
この切り替えの早さである。
クラスメイト達とも早々に仲良くなった品臣さんだが、美形好きだと知っている……というか気づいているのは、どうやら俺と獄寺君。それとリボーンだけみたいだった。
リボーンはともかく、獄寺君はさっきの時間が美術だったから、数学が始まる直前まで、どこかで時間を潰しているに違いない。
山本も加わって品臣さんの数学講座は滞りなく進んでいたが、そろそろ自分の席についた方がいいなと、クラスメイトが各々の席につき始めた頃。
しゃがんで俺の席に肘をついていた品臣さんは、顔の前で手を組むと、また深刻そうに呟いた。
「二人とも」
「ん?」
「なんだ?」
「これを貸しに、ボクになにかあった時は助けてくれ。切実に」
「これから一体、なにが起こるの!?」
再び流れる嫌な汗。
でも相手のトラブルメーカーっぷりを知らない山本は、(知ってても快諾しそうだけど)二つ返事でいい笑顔。
「おう!困った時はお互い様だしな!いつでも助っ人に呼んでくれよな!」
「っっ!」
山本。今品臣さんは尋常じゃない速度で、鼻を押さえた顔を逸らしたよ。