飴乃寂
□03
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「品臣さんがなにか企んでそうなんだけど……獄寺君はなにか知ってる?」
「いえ、なにも。そういえばあいつ、授業終わった途端に教室を出て行きましたね」
「………だよね」
「んー、女子が集まってる方にも見当たらないのな。品臣、サボりか?」
三時限目が終わり、四時限目は体育だから山本と、三時限目からは教室に戻ってきた獄寺君と三人でグラウンドに向かっている最中。
ひしひしと彼女に悪い予感を抱きつつも、当の本人は行方をくらましたまま戻ってない。
「ほっときゃいいんですよ、あんなやつ!もし十代目に因縁を吹っ掛けてきた時は、俺が制裁を下してやりますからご安心を!」
「そういうことじゃないよ、獄寺君……」
「もしもの時は助けてくれって頼まれちまったし、責任重大だな!ツナ!」
「もしもの時は山本が頼りだからね!?」
彼女には山本と一緒に、数学の課題を手伝ったのを借りに、もしもの時は助けてくれと言われたのだ。
切実に、と強調していたし。
誰かの助けが必要になるようなことが起こる、もしくは起こすつもりなのだろうか。
不安だ。心配だ。
それが悪い予感となって、グラウンドに向かって歩いている間も、なんだか落ち着かない。
「んな゙!?こんな野球馬鹿は頼りになりませんよ!代わりにこの右腕の俺が!」
「おいおい、ツナの右腕は俺だぜ?獄寺」
「うっせぇ!!てめぇは肩甲骨で充分だ!!」
「けっ、ケンカしないでよ二人とも!!」
どうして右腕でいつも張り合うんだか!
二人の仲裁に入るのに後ろを振り向くと、最近見慣れてきた金髪が、ずっと後方に見えた。
必死に、こっちに向かって走っている。
まるで何かに追われているようだ。
「品臣さん!?」
「あ?」
「ん?」
獄寺君と山本も振り向くと、向こうも俺達に気づいたらしい。
心持ち、走る速度が上がった気がする。
ジャージに着替えず、ブレザー姿のままの品臣さんが叫んだ。
「誰か助けてえぇ―――っっ!!!!」
「逃がさないよ」
「ヒバリさんんん!!?」
「ゲッ、ヒバリ!!」
「なんでヒバリに追われてんだ?」
なんと品臣さんの後を追うのは、トンファーを出して既に戦闘体勢に入っている我が校の委員長だった。
山本もあちゃーという風に引きつった顔をしているが、きっと追われている彼女は、文字通り死に物狂いなのだろう。
「もしもの時は助けるって言ったじゃん!!!」
「それを言われちゃ、行かねぇわけにはいかねぇんだが………なぁ、ツナ?」
(絶対に詐欺だ!!)
課題をやらずに先生からのお説教&特別課題をとるか、魔王との対峙で病院送りをとるか。
どちらを選ぶか、考えるまでもない。
「っていうかヒバリさんになにしたの―――!!?」
「ついぽろっと性的な本音をこぼしたら、トンファーが出てきたんだ!!」
「自業自得だよ!!」
よりによって風紀第一のヒバリさんに!
「つかてめぇ、こっちに来るんじゃねぇ!!一人で咬み殺されやがれ!!」
「嫌だ!!君達を道連れにしてでも、孤独死だけは回避する!!」
「ふざけんなっ!!」
品臣さんの前を俺達も走り出しながら、後ろに迫るヒバリさんを見る。
「ワォ、君達も混ざるのかい?大歓迎だよ」
「うぉっ、スピード上がったのな!」
「ヒイィ―――ッ!!!」
背後に感じる殺気が怖くて、涙目になりながら必死に足を動かしていると、視界を小さくて黒い影が横切った。
「貸しの一回は一回だ、ツナ。助けを求めるファミリーを見過ごすなんざ、マフィアのボス失格だぞ」
「ゲッ、リボーンまさか……!!」
ファミリーだのマフィアのボスだのを訂正する間もないまま、ズガンッと大きな音がした。
「リ・ボーン!!死ぬ気でヒバリを倒す!!」
「よっしゃ、やるか!」
「援護します十代目!!」
「イチノはこっちにいろ」
「うわあぁっ!怖かったよリボーン!!」