飴乃寂


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転校生がやってきてから数日経ったが、転校生はケンカを売ってくることも、トンファーを出すこともなく、いたって普通だ。


雰囲気は違うけど、山本に似てる気がする。


初日から好奇心旺盛なクラスメイト達は、興味津々と転校生の席に集まっていったけど、転校生も嫌な顔することなく喋っていたから。


早速話しに行った山本によると、面白いやつだったぜ!とのこと。


俺やリボーン、ヒバリさんの時も言ってた台詞だ。


正直あてにならないし、山本の言う「面白い」は、多様すぎて意味も曖昧だ。


一度京子ちゃんが転校生と話しに行ってるのを見て、山本に急かされて挨拶をしに行ったことはあるけど。



『さっ、沢田綱吉です……えと、みんなからは、ツナって呼ばれてるんだ。よろしくね』


『うん、品臣イチノです。一年間よろしくね、ツナ君』




その時にまた、笑ったところを見た。


全然怖そうじゃないし、普通にいい人だ。


マフィアとも無関係そうだし、俺はただ、いいクラスメイトが増えた。


そんな認識しかなかった。



「あくまで仮定の話だが………規律を守れず、制服もまともに着れない生徒がいるとしよう。そういう奴は遊びも派手で、ろくな人生を送らない」



根津の、あのテスト返しが始まるまでは。


答案を取りに教壇まで来た転校生―――品臣さんを見て、根津は続けた。


確かに品臣さんは制服の下にパーカーを着ていたし、だらしなくない程度に着崩していた。



「なぜなら学校の外でも、落ちぶれた連中とつるんでいるからな」



根津の言ってることは分からなかったけど、転校生まで苛めるなんて、本当に嫌なやつだ。


自分も被害者なので、根津に目をつけられてしまった品臣さんには同情を感じずにはいられない。


でも同情を感じたのは、品臣さんが言葉を発するまでだった。



「………お言葉ですが先生」


「な、なんだ?口答えする気か?」


「罵倒されるなら、美形で白衣の教師がいいです。美形の」


(美形って二回言った!!!)


「あと口臭いです。マスクしてください」


「なっ……な………なっ………!?」



根津も、始めは何を言われたのか分からなかったと思う。


だけど間違いなく、俺とクラスの皆は思ったはずだ。



なに言ってんだこの人―――!!!?




 
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