ハイキュー!!
□傷つけるほど好きだった
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高3設定
空が、泣いてる。
幼い頃から雨の日はそう思っていた。きっと、空に悲しいことがあったんだ、と。
高3にもなってそんな事を信じてるわけじゃないけど、やっぱり今でも考えてしまう。雨の日はなんだか人の心まで暗くさせてしまうものだ。
それでも、2年前のあの日だけは違った。
あの日も今日と同じように朝の天気予報を見ていなかった私は、傘を忘れたのだ。
「『どうしよう』」
あの日と同じ場所、同じ時間に同じ事を呟いてみる。
でも、もう王子様はいない。
『傘忘れたの?』
『あ、ツッキー』
『その呼び方やめてって言ってるでしょ』
『いいじゃん、ツッキー。何で嫌なの?』
『馴れ馴れしい』
『私とツッキーの仲じゃない!』
『仲良くなった覚えはないんだけど。じゃ。』
『ちょ、待ってツッキー!私を置いて行かないで!』
『うるさい』
『じゃあ何で話しかけたのさ』
『傘に入れてやろうと思ったけどうるさいからやめた』
『じゃあ静かにします』
『早くしないと置いて行くから』
何を話したかまで鮮明に覚えている。
少し前に席替えで隣になった月島くん。
話しかけてもいつも軽くあしらわれるだけだったから、こんなに普通に話せたのが嬉しかった。
そう、私は月島くんが好きだった。だからいつもは嫌いな雨も、この日だけはいつもより何倍も明るい気分で家に帰ったのだ。
けど、そんな綺麗な言葉だけではで終われない。
私がもうちょっとだけ、素直な子だったら。
今日も月島くんは私のそばにいてくれたかもしれない。
その日、月島くんは家まで私を送ってくれた。
その日は校舎の点検があるから全ての部活が休みで、だから帰りに相合傘なんてしてたら誰にも見つからないなんて不可能で。
そんなことをすっかり忘れてた私はただ浮かれてたんだ。
次の日学校に行くと、クラスは私と月島くんの話題で持ちきりだった。
『相合傘してたってほんと?』
『付き合ってるの?仲良いもんね!』
そうやって次々に質問されるのが嫌で教室を飛び出した。
確かに、月島くんのことが好き。でも、こんな噂になんてなったら月島くんがどう思うだろう。
飛び出した先には運悪く月島くんがいて。
『ツ、ツッキー!』
『何そんな慌ててんの?』
もう騒がれたくない。迷惑かけたくない。
その一心で、自分が何をしてしまったのかに気づいたときには、彼はもうその場にいなかった。
『もう、私に関わらないで!私、周りに噂されたりするの嫌なの!!』
あれから、2年。
何度も謝ろうと思った。でもそのたびに、顔を見ると思い出すのだ。傘に入れてくれた時の優しい顔と、廊下で叫んだ直後の傷ついた顔を。
謝ったところで助かるのは自分自身だ。
だから、毎回、何も見なかったフリをして、月島くんの側を通り過ぎる。
噂されるのが嫌なのも本当。でも、私が月島くんを好きなのも本当。
結局私は好きな人からの恩を仇で返すような人間で、そんな奴に王子様など現れるわけがないんだ。
あとどれくらい待てば、雨は止むのかな。
でも、私の心の雨はいつまでも止まない気がするのです。
傷つけるほど好きだった
(いつか、君に伝わればいい)
僕の知らない世界で様に提出