a little◇笠松幸男◇黒バス夢長編

□a little
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今日一日の終わりを告げるチャイムが、鳴る。

せわしなく動き出す、生徒たち。

部活動や委員会へ向かう生徒も、帰宅する生徒もいる。

海常高校男子バスケ部主将である笠松幸男は、今日も体育館の鍵を取りに職員室へ向かった。



「あっ、笠松センパイ!」

「……黄瀬か」



爽やかな笑顔で、手を振ってくる2つ下の後輩。

そいつに、頬を赤く染めた数名の女生徒が、ちらちらと視線を送っている。



「センパイ、今から鍵取りに行くんスか?」

「そうだよ。お前は先行ってろ」

「えー、一緒に行っちゃだめなんスか」

「お前がいると気が散る」

「ひどっ!!」



そんないつもどおりの会話を終え、職員室のドアを開ける。

いや、開けようと、した。

正確には、笠松がドアに手をかけようとした瞬間、ものすごい勢いでドアが開いたのだった。



「っ、苗字?」

『わっ、笠松先輩!』



ドアを開けた犯人は、さっき会った後輩と同い年の、苗字名前だった。



『すいません先輩ちょっとどいてもらっていいですか!』

「は、一体どうし……」



言いかけた言葉は、先生によって遮られた。



「おい!待て苗字!」

『嫌です!私、体育委員なんてやりませんから!他をあたってください!』



……どうやら苗字は、体育委員になるよう先生に頼まれているようだった。

拒否の言葉を言い捨て、廊下を走り去る苗字。


(あいかわらず、せわしない奴。)


そう思いながら、職員室へ入る。



「失礼します、鍵取りに来ました」



一応一言かけ、体育館の鍵を取る。



「君は確か3年の笠松くん、かな?」

「?はい」

「お願いだ!君からも苗字に体育委員をやってくれるよう頼んでくれないか?」



どうして、俺が?

そんな疑問が頭に浮かぶ。

頼むなら、クラスメイトとか同級生のほうがいいんじゃないだろうか。

その旨を先生に伝える。



「あの、なぜ俺に?頼むなら同級生とかのほうが」

「え?いや、だって……その、仲がいいだろう?君と彼女は。」

「は?」



仲が、いい?

確かに悪くはないが、特別という程でもない。

それに、なんだ。

なぜ口ごもる。



「まあ、後輩ですし」

「いや、そういうことではないんだが……。まあ、いい。よろしく頼んだよ」

「……やるかどうかは彼女次第ですが、一応は聞いてみます」

「おぉ!ありがとう。助かるよ」



頼まれたからには、声かけくらいはしておくか。

そう思いながら、すでに部員たちが待っているであろう体育館へと向かった。
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