short

□甘やかし
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結局ぞっこんなのは


「ゆっきちゃーん!」

「のわっ!?」


びびった
まじでびびった

部活が終了し着替え終わった瞬間、後ろから急に何かが体当たりしてきた

まぁ、ゆきちゃんだなんて呼ぶのは、俺の彼女しかいないわけだが


「海美!
いっつも急に抱きつくなって言ってんだろ!
つーか、更衣室に勝手に入ってくんな!」

「あ、海美っちだ」

「やほー黄瀬君っ
練習お疲れ様ー」

「さんきゅーっス
相変わらずぞっこんっスねー」

「えへへー」

「おい俺の話を聞け!
つーか、海美早く降りろ
歩けねーだろあほ!」


なんとこの一連の会話

海美は俺に後ろから抱きついたまま話してたんだよ

こいつは背がちっせーから、俺に飛び付くと足が浮く

だから俺は歩けない。その上俺の話を無視して黄瀬なんかと話してるなんて、全く迷惑な話だ


「よっ…と
ゆきちゃん、練習お疲れ様っ」

「おう、さんきゅ」

「やっぱゆきちゃんが1番かっこいいねっ」

「………」


海美の笑顔にときめきつつ、それを悟られないように頭を撫でる

頭を撫でると海美はすげー嬉しそうな顔をする

海美がこういう顔をするからやってるわけだが、だんだんと小動物…そう、チワワを撫でてるような感じがしてくる


「はいそこ、イチャイチャしなーい」


俺と海美の間に入ってきた森山

邪魔しかしてこねーなこのチャラ男


「イチャイチャしてねーよ…」

「あ!よしくんっ」

「よっ、海美
そろそろ笠松やめて俺にしない?」

「森山!
お前は毎度毎度海美をくどくな!シバくぞ!」


森山のケツを思いっきり蹴る


今更の説明になるが、海美は2コ下の幼なじみで、よく俺ん家に遊びにきたりする森山とは海美が入学する前からずっと仲が良い

森山とはっつーか、皆海美と仲が良い。個人的には全く面白くないわけだが


「よしくんもかっこいいよ?」

「でしょ?
笠松なんかより俺のほうが海美のこと大事にするって」


このアホは学習能力がないらしい

たった今シバいたはずが、ヘラっとして海美に触っている


「森山てめぇ、いい加減に「ゆきちゃん以上に優しい人っていないよ!」………し…やがれ」

「んー、納得いかないな。例えば?」


んー…と首を傾げて考え出した海美に、嫌な予感しかしない


(頼むから余計なことはぜってー言うなよー…)


「あっ!
この前夜中に目が覚めちゃった時、ゆきちゃん家に行ったんだけど、文句言わないで抱きしめてくれたりとか…。

あと、いつもするときは絶対ね、大丈夫かって何回も聞いてくれr「海美待て!!!ストップまじ黙れストップ!!」むぐっ」


反射的に海美の口をふさいだ

こいつは何てことを言ってくれたんだ

つーか何でそういう事を恥ずかしがりもせず、ペラペラとしゃべれんだ!


「笠松」

「……な、なんだよ」

「…お前、かっこいいな
何か…こう、考えらんねーな」

「何がだ!!!!」

「笠松先輩もやるときはやるんスね! 見直したっス!」

「だから何がだ!!」

「いやだからセックs「くたばれくそが!!!」ってぇ!!ひどいっスー!」


いつも通り飛び蹴りをくらわすとケラケラ笑ってる海美が視界に入った

ほんっとこいつは、能天気というか……


「ったく、どいつもこいつも…
ほら、海美帰んぞ」

「クスクス、はーい」


部室を出る前に後ろを着いてきてる海美が、防寒具を何もつけてないことに気付いた


「お前マフラーとか、手袋は?」

「マフラー昨日飛んでいっちゃったの、お気に入りだったのに

手袋は普通に忘れたーっ」


てへぺろ?とかなんとか言って笑ってたけど、風邪引いたらシャレにならない

自分に巻いてたマフラーを海美の首に巻いた


「ゆきちゃん寒くないの?」

「俺は平気だ
黙ってマフラーしてろ」

「ありがとうっ!」

「ばっ…!
だから急に抱きつくなって!」


ニーと笑ってる海美は可愛い

でも、こういうことを外でも恥ずかしがらずやってしまうのは、たまにどうかと思う



でも



「……ん」

「うんっ」



繋がれた手は、小さくて冷たくて今にも消えてしまいそうで



「帰りにマフラー買いに行くか」

「ほんと!?うれしいっ、やったー!」

「んじゃ、またな」

「またね、黄瀬君、よしくんっ」



俺はつくづく海美に甘くて、手放せないと思った




俺のほう
(最後めっちゃイチャつかれたっスね)
(あいつらは無意識だな)

(マフラーは俺が買ってやっから)
(ありがとう、ゆきちゃん大好き!)


'12,12,17


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