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□些細なことだけど
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私の彼氏は、努力家です



 照れ屋さん



放課後5時30分過ぎ

私は小テストの補習を終え、小走りで体育館に向かっていた

目的は、私の彼氏である笠松先輩に会いに行くためだ

入り口の前に到着して、少し乱れた呼吸をふぅーと息を吐いて落ち着かせる

少しだけ戸を開けて中を覗くと、部活は終わってるのに1人残って練習をしてる先輩の姿が確認できた

真剣な表情で練習してる先輩がかっこよくてかっこよくて、そのたびに好きだなーって思って少しにやけてしまう

こんな揺るみきった表情は先輩には見せられないよ


なるべく練習の邪魔をしないように、集中してるのを切らせないように静かに中に入り壁に背を預けた

手にはタオルと飲み物を用意して、いつ練習が終わっても大丈夫なようにスタンバイ


最初は笠松先輩ばっか見て、たまに携帯を確認したり、鏡を見てまた先輩を見てたりしたんだけど


「ふゎ……」


だんだん暇という気持ちが大きくなってきちゃって、私は同時に襲ってきた眠気に耐えられず、ゆっくり瞼を閉じた






「…!」


誰かに名前を呼ばれてる気がしてうっすらと目を開けると


「あ、起きたか?」


視界に入ってきた人物を見て、一気に目が覚めた


「か、かか笠松先輩っ!」


先輩は既に制服に着替えていて、思ってたより距離が近いのと、+寝起きで変な声が出た

恥ずかしい…!!


「驚きすぎだばか」


ククッと小さく笑う先輩に心臓をわしずかみされた感覚になる

ほんとこの人は私をキュン死にさせる気なのかもしれない、とすら思えてくる


「あ、す、すいません」

「謝る必要は全くねーよ
待っててくれたんだろ?」


そう言いながら先輩が指差した方には、スタンバイしていたタオルと飲み物

あ、持ってるの忘れてた…!


「自主練お疲れ様です!」

「おう、さんきゅ
寒くなかったか?」

「こんなの寒いのうちに入りませんよっ」


大丈夫という意味を込めて、ピースをした

少し眉間にしわを寄せた先輩は、私の手を掴んでさらに顔を歪ませる


「おまっ…!
冷てーじゃねぇか!」

「これくらい大丈夫ですよ」

「お前が大丈夫大丈夫言っても、俺が心配なんだよばか

無茶して風邪なんか引いたらしばくからな!」

「せ、先輩を待つのは、全然苦じゃないですよっ

でも、気を付けます…
私なんかの心配してくれて嬉しいです」

「好きな奴の心配するのは当然だろーが」


先輩はあまり好きという言葉を言わない

私もだけど、私に負けないくらい照れ屋さんなのだ

だから耳を疑った

今好きな奴って言ったよね…?


「先輩今何て…」

「ん?
だから好きな奴の心配するのは……………!!」


自分の言った言葉の重大さに気付いたのか、バッと手で口を抑えた先輩

無意識だったらしい

私に背を向けてしまった先輩は耳が真っ赤で

きっと顔も真っ赤なんだと思う


見たい


恥ずかしいよりその気持ちのほうが大きくて、私は立ち上がって先輩の顔を覗いた


「ばっ…!見んな!」


見えると思ったら、手を引かれて抱きしめられた


「先輩、これじゃあ顔が見えません」

「見なくていい!」


ぎゅっと先輩の手に力が入る

見たかったけど残念


「笠松先輩」

「なんだ?」

「好きな奴ってすごい嬉しかったです」

「…おう」


無意識でも言ってくれた

だから私も伝えたい


「私も笠松先輩大好きですっ!」


少し汗の匂いがする先輩の首に手を回した



好きが増す
(先輩いい匂いします〜)
(嗅ぐなばか!)

`12,11,29


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