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□見えない彼
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影が薄いと、今までに何回も言われてきた

気付いてもらえたことはあまりない



見えない彼



慣れてくれば、大分見えるようにはなる

でも、火神君や先輩方でさえ、僕が見えないことが多々あるから、それだけ影が薄いんだろうな

だからと言って、どうすることもできないんですが


「黒子、帰んねーのか?」

「ちょっと図書室に行ってきます
先に帰って大丈夫ですよ」

「おぉ、じゃあまたな」

「はい」


図書室には、1人でよく行く

誰かいたところで、気付いてもらえたことは1回もない


適当に本を選んで、席に座る

少しするとドアが開いて、女子が2人入ってきた


「っしゃ、誰もいないよー」

「誰もいないよ!」


いますけどね

入ってきた女子を見る

2人とは別に後から女子がもう1人入ってきた

ほんのり茶髪でセミロングの女の子


「ほんとに誰もいないの?…………あ」


ぐるっと周囲を見回した彼女とばっちり目が合った

僕に気付いた…?


「人いるじゃん、ちゃんと確認してよ」

「は?
え…だって今さっきまで…うわ!…気付かなかった」

「うちも気付かなかった…」


それが普通の反応だ

でも、あの子は僕に気付いた


「…僕はもう帰るので」


たまたまだろうと、あまり気にせずに早足に図書室を出た




「黒子君!」


僕の名前が呼ばれたのは、靴を履き替えようと思った時

その声はさっき図書室にいた茶髪の女の子


「……はい」

「さっき、私の友達が失礼なこと言ってごめんね

あと、気遣わせちゃったらごめん」


彼女は僕の前まで来て、手を合わせて謝った

背は僕より大分小さい


「いえ、本当に帰ろうと思ってたので大丈夫です

……あと、僕の名前…」


彼女とは初対面のはずなのに、何で知っていたんだろう

僕の問いに彼女はニコッと笑い


「知ってるよ、黒子テツヤ君

だってバスケ部ですごい活躍してるもん」

「バスケ部、見に来てるんですか?」

「友達に誘われて練習とか試合とか、よく見に行ってるよ

黒子君ってなんかすごい技使うよね!

いつも思わず目で追っちゃうの」

「え…目で追えるんですか…?」


僕は、観客から見ていてもなかなか見つけられないはず

ましてや、目でずっと追えるなんて…


「人を目で追えるのって当たり前じゃないの?」


キョトンとして首を小さく傾げた彼女に少しドキッとする

同時に指通りのよさそうな髪がふわっと揺れる


今まで影が薄くて誰にも気付いてもらえなくて、見えないのが普通と思ってた僕にとって、すごく嬉しいことだった


「…そ、うですね」

「これからも見に行くから、部活頑張ってね」


じゃーねー!と僕に背を向けた彼女

気付いたら僕は彼女の腕を掴んでいて


「………あの」

「?」


何を言うか考えてなかった

でも、もっと彼女のことを知りたい

彼女と関わりたい


「…お名前、教えてもらえませんか」

「あ、まだ言ってなかったっけ?

海美!
坂口海美だよ!」


彼女はとっても可愛らしい笑顔でそう言った



見つけた彼女
(坂口海美さん…)
(これからもよろしくね)

`12,11,24

 

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