ヱヴァンゲリヲン二次創作版

□ヱヴァンゲリヲン二次創作版:破 09
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“起きろ”
何者かの意志が頭の中に語りかけてくる。
“起きろ”
(此処は何処だ?)
“起きろ”
(俺は何をしている?)
“起きろ”
頭の中に白い巨人のイメージが流れこんでくる。
「はっ…」
サガミはエントリープラグの中で目を覚ました。
「此処は?」
周りは真っ白な空間だった。
「ディラックの海…。実験は失敗したのか…」
モニターにはS2機関暴走のウィンドウが出ている。
「S2機関の暴走?何処にも問題は無かったはず…。いたっ…!」
身を乗り出した瞬間、背中に痛みを感じる。
サガミは4号機を動かし、背中に刺さっているものを抜いた。見るとそれは紫色の穂先の広い槍だった。
「カシウスの槍!?コピーか!?」
サガミがモニターを見るとS2機関の暴走は収まっている。
「槍で強制的に暴走させたのか…」
そう言うとレバーに付いたボタンを操作し、コンソールを呼び出す。そして高速でキーボードを叩き、大量のウィンドウを出す。
「ディラックの海…何も無い虚数空間…ならば脱出する方法は…」
ブツブツ呟きながら操作を続ける。やがて答えを得たのかウィンドウを全て閉じた。
「もう一度槍を使うか、すでに穴が開いている場合はA.T.フィールドでこの空間を拒絶するか、かな」



ミサトが発令所に入ってくる。
「使徒は何処から来たの?」
「不明です。上空に突然現れました」
青葉が報告する。
「波長パターンはオレンジです。A.T.フィールドも確認出来ません。使徒かどうかは微妙な所です」
日向が補足する。
「新種の使徒かしら?パイロットは?」
「すでに出撃準備に取り掛かっています」


アスカはプラグスーツの手首のボタンを押した。空気が抜ける音と共にスーツが縮小する。
「私がサガミの分まで頑張んなきゃ行けないのね」
「いいえ」
アスカの言葉をレイが否定する。レイは新型の03と書かれた黒いプラグスーツを着ながら言った。
「支援は、サガミ君の役目は私がやるわ。貴女は自分の役目に専念して」
そう言ってレイはプラグスーツの手の甲にあるモンスターボールの様な赤いボタンを押した。空気が抜けてスーツが縮小する。
「アンタなんかに任せられないわよ。一度はEVAを下ろされた癖に」
「協力する気が無いの?」
「あたし一人で出来るわ」
アスカは部屋を出ていく。
「それじゃあサガミ君は喜ばないわ…」


「サガミに任されたんだから」
エントリープラグの中でアスカが呟く。
『慎重に接近して反応をうかがい、可能 であれば市街地上空外への誘導も行う。先行する一機を残りが援護良いわね』
「ミサト、あたしが先行するわ」
『それが良いわね。他の二人、異義は無い?』
『式波の好きにしてよ』
『問題はありません』
ミサトの質問にシンジとレイが答える。
「じゃあいくわ!」
アスカはそう言って2号機を走らせる。
『アスカ、前に出過ぎよ』
ミサトの制止を振り切ってジャンプする。
「どおりゃあぁぁぁぁ!」
ソニックグレイブを振りかぶり、使徒に斬りかかる。しかし使徒は斬られる直前に一瞬で消えた。
「消えた!?」
2号機は着地したあと使徒が居たところを振り返る。
「何処行ったのよ」
2号機が辺りを見渡す。その時2号機のエントリープラグの中に警報が鳴り響く。
「パターン青!何処にいるの!?」
使徒が2号機の上空に現れる。同時に使徒の影に2号機が沈み始める。
「下!?こっちが本体か!」
2号機が脱出しようともがくが更に沈みゆく。
「チッ…ファースト!援護!」
零号機がライフルで上空の使徒を撃つ。しかしライフルの弾は使徒をすり抜けて反対側に飛んでいく。
「本体を攻撃しないと駄目か!ナナヒカリ!」
初号機がバレットライフルで使徒の影を攻撃する。
「このっ、離しなさいよ、この!」
2号機が影に飲み込まれていく。
「式波!」
シンジが2号機に繋がれたケーブルを引っ張るが途中で切れている。
「くそっ式波!」
シンジがバレットライフルを使徒に向ける。
『シンジ君、止めなさい。あなたも飲み込まれるわよ』
「でも、式波は!?」
『作戦を練り直すわ。このままじゃアスカも助けられないわ』
「くっ…」


「まさかこんなにあっさりやられるとはね。ファーストは今ごろ笑ってるわね」
アスカはエントリープラグの中で目を瞑る。



夕焼けの中を走る電車にアスカが乗っている。アスカは目の前に座っている影に話しかける。
「アンタ、誰よ」
“僕?式波・アスカ・ラングレー”
影が答える。
「それはアタシよ」
“僕は君だよ。人は自分の中にもう一人の自分を持っている。自分と言うのは常に2人でできているものさ”
「2人?」
“実際に見られる自分とそれを見つめている自分だよ。式波・アスカ・ラングレーと言う人物だって何人もいるんだ。君の心の中にいるもう一人の式波・アスカ・ラングレー、葛城ミサトの心の中にいる式波・アスカ・ラングレー、碇シンジの中のアスカ、綾波レイの中のアスカ、 サガミ・スラーヴァの中のアスカ。みんなそれぞれ違う式波・アスカ・ラングレーだけど、どれも本物の式波・アスカ・ラングレーさ”
「嘘よ!!」
アスカが叫ぶ。
「他人の中のアタシなんてみんな偽者よ!」
“誰も自分の気持ちをわかってないから?”
「アタシはみんなが思っているほど強く無いのよ」
“他人にはそんなこと言わないのに”
「自分の弱みを他人に教えたく無いのよ」
“君は何がしたいんだ?”
「知らないわよ!そんなこと!」
アスカは叫び顔を伏せる。
“もういいや、新しい人が来たみたいだし、さよなら、式波・アスカ・ラングレー”
影は別の車両に去って行った。
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