main【銀魂】

□「さよならベンチ」と。
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仕事が、ない。

いや、いつものことだけど。

そろそろ野垂れ死ぬかな、なんて冷静に思った。

むしろ今まで死ななかったのが奇跡だ。




銀さん、来ねぇかな…
腹減った。

いつも俺が死にそうな絶妙なタイミングで現れる。

そん時は銀さんが神様に見えたり。
いや、ホントに。死活問題だからさ。

実際、銀さんって銀色の髪で肌なんか意外と白くて…

「死んだ魚の目」なんて言われてる目だって、憂いげで神秘的だったりする…かもしれない。

人間キツイ時ってのはそーゆーのも神様に見えるんだって!


「はぁぁ。銀さん…」

「何?」

「うぉっふぅあっ!?」

名前を呼んだら本人が返事したのでビビった。

「何?呼んでくれちゃって。銀さん嬉しい((はーと」

ふざけながらも、タバコを渡してくれる。

「すまねぇな、銀さん」
「どうせまた仕事ねぇんだろ?」

「うん…」

はっきり言われると傷つくから。

「うち来いよ」

「え?」

「いや、だから。うち来いよ」

「いや、でも…」

「じゃ、とりあえずうち来いよ。野垂れ死ぬぞ」

そう言いながら無理やりベンチから俺を立たせた。

ここは甘えておいた方がいいかもしれない。

ホントに死にそうだし。

「じゃあ…」

「あ、でもあんまり大したもんは食えないけどいい?」

「そんなの…!」

飯があるだけ有難い。

「すまねぇな、ほんと」

「いいってことよ」

そのあとはいつも通り、他愛ない話で盛り上がった。

「でな、神楽のやつ…」

銀さんが喋ってるけど、実は後半辺りから集中出来なくなった。

どうして銀さんはこんなに自分に優しいのか。

いや、銀さんは誰にだって優しいけど、それだって…

若くて可愛い女の子とかだったら分かる。
自分だって優しくするさ。

けど、俺は若くないし可愛くないし、女の子でもない。

ちょっとやそっとじゃ死なない頑丈な体も持ってる。

銀さんがここまで俺を甘やかしてくれる理由が見つからない。

「…だから新撰組は評判悪いんだっつの!なぁ?長谷川さんもそう思うだろ?」

「え、あ。うん」

「…どうした?もしかして具合悪いとか…!?」

「違っ…」

俺の体調を気にして慌てる銀さんに急いで否定する。

まぁ、精神的には具合悪いっていうか…

「銀さんさ…」

顔色を見るために覗き込んでいた銀さんと目が合う。

「…なんで俺にそんなよくしてくれるの?俺、可愛い女の子とかじゃねぇし…」

「可愛い女の子じゃなかったら、優しくしちゃだめ?」

「可愛い女の子だったら、優しくしたらこう…ヤラシイ話、見返り…的な…」

下心があったり、するだろ?

「なんでかな…って…」

思ったんだ。ちょっとした出来心っつうか…




「俺が長谷川さん好きだから」


「…へ?」

「俺が長谷川さん好きなの!何度もいわせんなよ、恥ずかしい」

「それって…」

友達としてだよな?そうだよな?

まさかこんなオッサンに好きって、そんな…あるわけない。

「俺も好きだなぁ、銀さんのこと」

飯食わせてくれるし、優しいし。

「はぁ…」

「?」

なぜかため息をついた銀さんは、家に着くまで喋らなかった。
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