時を越えて(完)
□じゅう
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小屋に入れば自分が出た時とあまり変わらずりのは比古に酒を用意すると盆に徳利を置く。
「さて…と、今頃になってノコノコ 姿を現しやがって この俺に一体 何の用だ?」
「"新津覚之進"といえば陶芸界でちょっと注目の新人だそうですね。なんで また陶芸家に?」
「…別に陶芸でなくてもかまわないさ、ただうざったい人付き合いをせず暮らすには芸術家が一番 てっとり早い」
「…簡単に言いますね」
「まあな、真の天才は何でもこなしてしまうものさ」
「(自信家ぶりは相変わらずか…)」
りのも苦笑いしながら比古の隣に酒を置いてから剣心の隣に座った。
「話をはぐらかしたな。お前 何かいいづらい事を話に来ただろう、俺はお前の師匠だぜ。バカ弟子の考えなどすぐにお見通しさ」
「……………単刀直入に言います、十五年前にやり残した"飛天御剣流奥義"の伝授ーーー今こそお願い致したい!!」
「断る」
片膝を着き頭を垂れる剣心に一刀両断した比古。
「あの時 勝手に出ていったのはお前の方だぜ、それをなんで今更」
外套を翻し部屋を出て行こうとするその裾を掴んで剣心は比古を仰ぎ見るがその目は焦りが含まれている。
りのもまたそんな二人を真剣な顔で見つめていた。
「……お願い、致します……」
「…どうやら相当せっぱ詰まった事情の様だな。いいだろう、聞くだけ聞いてやる」