短編〜中編
□女の闘い
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「あの…?こちらに緋村剣心がいるとーーー」
「え!?」
その人から出た名前に過剰に反応してしまった。
何せこんな可愛い人が剣心の知り合いとなると気が気ではない。今まで剣心から女性の話が出た事はないから安心してたけど…。
何処か旅の途中で助けでもしたのか、と思いながら引き攣りそうになる顔を何とか抑えた。
「え、えぇ…居ますが」
「お?おおお!?なんでェ!嬢ちゃん、こんな知り合いいたのか!!」
何を感知したのか、先程まで寝ていた筈の左之助が起きてきた。
「あんた名前は?俺は相楽左之助ってんだ!」
「相楽…あぁ!左之さん、ですね。お話は予々…。私、 りのと申します。以後お見知りおきを」
そう言って華の様な笑みを浮かべたままぺこりと頭を下げた りのさんに左之助はだらしなく鼻の下を伸ばした。
てゆうか予々?誰から?
「で、道場〈ここ〉になんか用か?」
ニコニコと普段なら有り得ない程に顔を緩めた左之助に若干イラっとしたが、何とか抑えた。
「何だか“剣心”に用があるみたいなの」
さり気なく剣心の名前を呼び捨てで強調して、仲の良さをひけらかしながら余裕を見せて笑顔を作った。
そんなコトは居に返さないのか、 りのさんは相変わらず笑顔のまま、そうなんです。と何とものほほんと返して来た。
「へぇー、剣心の知り合いか?彼奴も隅におけねェなぁ。まあ立ち話もなんだし中に入んな」
「ここ私の家なんですけど?」
勝手に客人を上げようとする左之助を睨んで見たが、 りのさんに夢中なのかどうでも良さ気に返された。
「まあまあ、堅い事言うねェ。 りのも気にせず中に入りな」
左之助にそう言われた りのさんは、だが私の顔を見て困ったとばかりに苦笑いした。
「あの…いいのでしょうか?」
「ああ、どうぞ!遠慮しないで下さい」
お伺いを立てられてダメとも言えず、渋々ながらもそれを悟られない様に中へと促した。
しかも左之助に言われるまま…じゃなくキチンと私に確認を取るあたり出来た人感が余計に癪に障る。