短編〜中編

□別れの後で
2ページ/13ページ

りのを置いて外に出ると案の定、奴がいた。

真っ直ぐに俺を睨みつける。

んな顔すんならもっと大事にしてやりゃあいいのによ…。

左「おう、剣心!なんか用か?」

いつも通りニッと笑って素知らぬ振りで声を掛ければ、剣心の眉間の皺が深くなった。

剣「 りの殿が来ているだろう?」

左「ああ、来てるぜ。それが?」

剣「朝餉もまだなんだ。具合も悪そうだし連れて帰る」

なんも知らねェって顔がムカつく。
いや、実際知らねェんだけどよ…。

左「そりゃあ無理な相談だな。具合悪ぃのは分かってらァ。いつもの事だからよ、俺ンとこで休んでれば良くなる。したら適当に朝飯喰わせとくから気にすんな」

別に剣心の事は嫌いじゃねェ。
俺を変えてくれたし恩もある…。

けどな、 りのの事は別なんだよ。

惚れた女、譲ったんだ。こいつならって…。

なのになんだこのザマは。

こんな事なら…。

俺が…


剣「左之…何か知っているのでござるか…」

疑問、の筈なのに確信を得た言い方。そんな事はわかんのに…。

なんで気付いてやれねェ、なんで…。

左「知ってる、全部な。」

剣「なら!拙者に…」

左「教えろってか?…お断りだね。俺が気付いて無理矢理聞き出したんだ。誰にも言わないでくれってあいつの頼みだし、それに…本当なら剣心、お前が一番に気付いて支えてやらなきゃなんなかったんじゃねェーの?悪ぃけど、帰ってくんねェか、んでもって少し頭冷やしてこい」

呆然と立ち尽くす剣心を置いて、長屋に戻ると りのは壁に寄り掛かって脚を投げ出しぼんやりと宙を見てた。

いつもの光景。

あの夢を見ると何かを考え込んでいるのか、決まってこうなる。

左「 りの…なあ、お前どうなっちまうんだよ…」

辛いなら、よめとけよ…。

俺にしとけばいいじゃねェか…。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ