短編〜中編
□別れの後で
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りのを置いて外に出ると案の定、奴がいた。
真っ直ぐに俺を睨みつける。
んな顔すんならもっと大事にしてやりゃあいいのによ…。
左「おう、剣心!なんか用か?」
いつも通りニッと笑って素知らぬ振りで声を掛ければ、剣心の眉間の皺が深くなった。
剣「 りの殿が来ているだろう?」
左「ああ、来てるぜ。それが?」
剣「朝餉もまだなんだ。具合も悪そうだし連れて帰る」
なんも知らねェって顔がムカつく。
いや、実際知らねェんだけどよ…。
左「そりゃあ無理な相談だな。具合悪ぃのは分かってらァ。いつもの事だからよ、俺ンとこで休んでれば良くなる。したら適当に朝飯喰わせとくから気にすんな」
別に剣心の事は嫌いじゃねェ。
俺を変えてくれたし恩もある…。
けどな、 りのの事は別なんだよ。
惚れた女、譲ったんだ。こいつならって…。
なのになんだこのザマは。
こんな事なら…。
俺が…
剣「左之…何か知っているのでござるか…」
疑問、の筈なのに確信を得た言い方。そんな事はわかんのに…。
なんで気付いてやれねェ、なんで…。
左「知ってる、全部な。」
剣「なら!拙者に…」
左「教えろってか?…お断りだね。俺が気付いて無理矢理聞き出したんだ。誰にも言わないでくれってあいつの頼みだし、それに…本当なら剣心、お前が一番に気付いて支えてやらなきゃなんなかったんじゃねェーの?悪ぃけど、帰ってくんねェか、んでもって少し頭冷やしてこい」
呆然と立ち尽くす剣心を置いて、長屋に戻ると りのは壁に寄り掛かって脚を投げ出しぼんやりと宙を見てた。
いつもの光景。
あの夢を見ると何かを考え込んでいるのか、決まってこうなる。
左「 りの…なあ、お前どうなっちまうんだよ…」
辛いなら、よめとけよ…。
俺にしとけばいいじゃねェか…。