短編〜中編
□愛のカタチ
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遊撃剣士となった後の鳥羽伏見の戦いに於いて
忘れられない出逢いを果たした。
「人斬り抜刀斎だ!」
「怯むな!援軍がすぐにくる!!」
「うぁあああああ!」
鉢合わせた新撰組隊士との斬り合いの最中、一人の男が無謀にも斬りかかってくる。
その刃を往なし斬りかかったが、それは一人の人物によって遮られた。
「今は戦火の中だ!隊士が減るのは不味い、一人でも多くの存命を優先して!!ここは私が引き受けます、今の内に撤退を!」
「 りのさん!?」
「すまない!全員撤退!他の組と合流するぞ!!」
もとより追い掛ける気は無かった為に、その場にいた四人の隊士が引き上げたのを見届けると刀を競り合わせる相手が振り返るのを見届けた。
俺よりも小さな上背に自然と眉間に皺が寄る。
が、その振り返った人に息が止まる。
「女…」
「…じゃ、悪い?抜刀斎ね。何よ、噂より悪い人には見えないけど?」
「どんな噂か知らないが、女を斬るつもりはない」
「私も斬られるつもりはないわ。と、言う事で…私も引き上げていい?」
「………」
変な女
それが第二印象。
「好きにしろ…」
「ありがとう、じゃあまたね!」
「また…?」
刀を収めた女はニコリと笑って手を降ると先程の隊士が引き上げた道を走り出した。
「おい!名前…!」
「! りの、沖田 りのよ!」
「沖田…?」
走り去る女に名前を聞いた自分に驚きを隠せない。
何故名前など…
しかし、振り返った女はそれさえも意に返す様子なく再びあの笑顔で名前を告げた。
そうしてまた走り出した後姿を見えなくなるまで見つめていた自分に再度驚きを隠せなかった。
第一印象は、天女。
そんなもん、見た事もないから想像でしかないが、それが一番しっくりきた…
艶やかな黒髪を高く結わえ何色にも染まりそうな、それでいて何色にも染まらなそうな白い肌。
月の光の所為か、金色にも見えた目は猫を彷彿とさせた。
新撰組に女が居た話は聞いた事が無い。
ならば彼女は何者なのか。
いや、新撰組隊士を庇った時点であちら側の人間なのだろう事は分かるが…
その後彼女と相まみえる事は無かった。
そしてーーーーー