御礼

□君の姿が
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こうして並んで歩く事も、もしかしたら最後かもしれないのだ。

りのの返答次第では…。

玄関に着くと俯くりのの髪を撫でて顔を上げたりのに笑ってみせた。

だがそれはともすれば寂しそうにも辛そうにも見える笑い方でりのは眉根を寄せて泣きそうになるのを我慢した。

「あの…」

「返事は、急がなくて構わないでござる。りの殿の将来を左右する話だ。ゆっくり考えて欲しいでござるよ」

おやすみ、そう言ってりのが何か声を掛ける前に剣心は暗闇へと姿を紛れさせた。

「……………」

りのは剣心の姿が見えなくなると零れそうな涙を拭い意を決した顔で真っ直ぐに前を向くと踵を返し父のいる部屋へと戻った。

剣心の話しを聞いて、正直動揺した。
この先剣心を支えていけるのか…。知らなかった事が浮き彫りになって、初めて剣心の闇を見て、機から見れば子どもだろう自分が彼を支え愛せるのか…。

そして、前妻の影…。

その人を越えなければこの先一生その影は着いて周りいつか自分が取り込まれて壊れてしまう気がしてならなかった。


越えられるのか、剣心が初めて愛した人を。人を愛する事が初めての自分が…。
そうして、かれを受け入れるのならばこの先もずっと剣心の心に住み着く前妻をも受け入れなければならないだろう。

それは、思うよりずっと難しくて辛い事だと思う。

自信なんて無い…、そんなモノ、貰えるなら貰いたい位だ。


「父さん…」

部屋に着くと戸の脇に立ち一人酒を舐め物思いに耽る父に声を掛けた。

「ん?ああ…。寂しいモンだな…」

「ごめんなさい…」

「何、お前が謝る事じゃないさ。りのはちゃんと幸せになりなさい」

「……はい」



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