御礼

□君の姿が
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夜、山田さんの家に着くと灯る明かりに不安と期待が入り交じる。

全てを打ち明け受け入れて貰えるのかどうかという不安。
りの殿なら受け入れてくれるのではないかという期待。

「はあ…」

深く息を吐き出し澱みの様に心の奥底に溜まる不安を吐き出し来訪を告げる為に玄関へと手を掛けた。

「御免、緋村剣心でござるが…」

扉を開け中を覗くと奥からはりの殿が早足に出てきた。

「剣心!いらっしゃい、どうぞ上がって」

和と洋を織り交ぜた屋敷だからか、昼間の様にすりっぱなるものを差し出されそれに足を入れるとりの殿の後ろを着いて部屋に通された。

「よお、緋村。こんな時間に悪いな」

「いや、大丈夫です。仕事は終えたんですか」

通された部屋で手招きする山田さんの向かいに腰を降ろす。

「一応な。りの!酒を持って来てくれ!」

「山田さん…、拙者酒は…」

「まあ硬い事言うなよ。少しでも酔った方が話しやすいだろ?」

「はあ…」

完璧他人事で豪快に笑う山田さんに苦笑いしながらりの殿が運んでくれたお猪口に酒が注がれるのを見ていた。

「りの、お前も座れ」

「はい」

盆を横に置いて拙者の隣に座ったりの殿は緊張気味に箸と皿を差し出してくれた。

「お口に合うか分からないんですけど…」

「全部りの殿が?」

「はい、一応…」

並んだ料理は豪華と言う訳では無い。ごく普通の一般家庭で出て来るものだろう。

「りのの料理は美味いぞ、喰ってみろ」

箸を勧められて一口。想像を絶する美味さとか、そういうのでは無く…。
ただ何処までも優しい味がした。

「(山田さんがそれだけ大事に育てたのでござろう…)」

相手を想う温かさが詰まった味だ。食事に感動を覚えたのは初めての経験だった。

「あの…、お口に合いませんか…?」

不安そうに聞くりの殿に己が黙ったままだった事に気付き慌てて首を振った。

「美味しいでござるよ、とても。感動して言葉が出なかっただけでござる」

ニコリと笑えばりの殿はホッと胸を撫で下ろしてはにかんだ。



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