御礼

□君の心へ
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甘味処に着いた二人が外でのんびりとお茶を楽しんでいると一台の馬車が速度を上げて近付いてくる。

それに一瞬、眉を顰めた剣心だが万が一りのに何かあってはと中に入る様促すが、立ち上がったりのより早く、その馬車が甘味処の前で止まった。

その中から出て来た人物に驚いたのは、りのだけでは無かった。

「父さ…」

「山田さん!?」

りのが馬車を降りた人、つまり父に声を掛けるより早く剣心が驚きに声を上げた。

山田顕義(38)は高杉晋作も認める程の軍略の才を持ち維新達成に貢献した一人だ。

同じ長州藩で何度か話した事がある。

「……はれ?」

が、素晴らしい才覚を持つ人物は周りが思うよりボケッとしている。

「ちょっと待って、りのの恋人って緋村!?」

「え…!?父さん剣心の事知ってるの?」

「父さん!?」

娘、りのが男と歩いていると聞いた顕義は居ても立ってもいられず駆け付けたが、まさか恋人が同じ維新志士だとは思いもしなかったのだ。
ただ帯刀している怪しい人としか、近所の人には聞いていなかったから…。

その娘は父が剣心を知っていた事に、剣心が父を知っている事に驚いている。

剣心も、りのが同じ長州藩維新志士の娘だった事に驚いていた。



その後直ぐに三人ともにその場に固まっていると、店の主人に商売の邪魔だと追い出され今は山田の屋敷に向かい馬車に乗っている。

その間、剣心はふと疑問を持った。

りのの苗字は確か 藤咲だった筈だ。山田が父なら苗字も山田な筈では、と。

「その…、つかぬ事を聞くが。りの殿の苗字は確か 藤咲では?」

「え、あ!私は母方の性を名乗っています。父が明治維新に関わっているので悪い人に狙われない様にって言われて…」

「成る程、そうでござったか」





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