御礼

□君の心へ
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あの衆人環視の元晴れて恋人同士になった剣心とりの。

だが二人の途は前途多難…。







「今日も良い天気でござるなあ!」

「「「………」」」

場所は神谷道場にて。
掃除に洗濯と勤しむ剣心だが、空は曇りだ。

数日前に剣心とりのの行く末を見てしまった薫は渋々、本当に渋々、と言うより泣く泣く剣心を諦めた。

そして、問題はそれだけでは無い…。

あの日弥彦から聞いた衝撃の事実と噂に薫を始め弥彦と左之助は迷っていた。

これを剣心に伝えるべきか、それとも本人同士で話題に上るまで黙っているべきか…。

「どうすんだよ…」

「どうするったって、なあ…?」

「そうよね…。いくら剣心だって常識は多少ある訳だし…」

三人がうだうだ悩んでいる間にもりのが稽古に門前を通る時間なのか剣心はウキウキと外へ出て行ってしまった。

「りの殿!」

「剣心!こんにちは」

「こんにちはでござる」

「ねえ、今度この前言ってたお芝居見にいかない?今月で今公演してるのが終わっちゃうからその前にもう一度見ておきたくて…」

「そうでござるな。約束だし、行こう」

ニコニコと微笑み合いながらそんな会話をしているのだろう声が、三人の元まで届く。

恋人同士になってから、りのは今までより少し早目に神谷道場の前を通るようになった。
それは少しでも剣心と一緒にいたいからで、それが分かっているから剣心も嬉しそうだ。

勿論りのの休みの日も把握しているのか、これまでの様にそわそわする事も無く、気にする事無く門前に向かう事も無い。

剣心とりの、二人の間で人知れず暗黙の決まり事でもあるかの様に自然とそうなっていた。


「りの殿、そろそろ時間でござろう」

「本当だ!剣心といると楽しくてつい時間を忘れちゃう。いってきます」

「いってらっしゃい…」

手を振り笑顔で稽古に向かうりのを見送る剣心は、言われた言葉が嬉しいのか薄っすらと頬を染めて手を振り返した。

「りの殿は素直と言うかなんと言うか…。拙者を喜ばせる達人でござるなあ」

ぽりぽりと頭を掻いて照れ笑いする剣心に遠めに離れたりのが振り返って手を振ると、剣心もまたもう一度振りかえしその後姿が見えなくなると中へと戻っていった。



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