御礼

□君の隣で
2ページ/5ページ

掃除に洗濯も終わり夕飯の買い物にでも行くかと薫に声を掛けた剣心は一人町の方へ向かった。


その後を追う三つの影。

「お前ェらヘマすんなよ」

「誰に言ってんだ」

「ちょっと静かにしてよ!」

物陰から通りを伺いながら弥彦が言った一言に左之がムッと弥彦へ拳骨を落とす。
そんな二人を咎める薫の顔は真剣だ。

どんどん歩いて行く剣心は時々キョロキョロと辺りを見渡しては少し落胆しつつ町中に向かう。


「何探してんだ…?」

「さあ…」


矢鱈周りを気にする剣心を怪訝な顔で見つめる三人に衝撃が訪れたのはその直後だった。




「剣心!」

「!…おろ、りの殿ではござらんか」

平静を装ってはいるものの、名前を呼ばれた瞬間この上無く嬉しそうな顔をしたのを見てしまった。

「何処かお出掛けですか?」

「いや、夕飯の買い物に来ただけでござる」

会話する二人の後ろでは友達だろう女子が三人程、剣心を見てきゃあきゃあと騒いでいる。

四人共に薫と同い年か、少し上に見える。

「芝居は楽しかったでござるか?」

「はい!凄く良かったのでまた見たいくらい!剣心も良かったら今度見に行ってみて」

「拙者、芝居はちと分からんので行っても楽しめるか…」

「なら私がご一緒しますよ」

余程楽しかったのか、ふふ、と屈託なく笑いながら言われた言葉に剣心は舞い上がった。

「それなら…」

行ってみようか、と続く言葉は後ろで騒いでいた女の子達に寄って遮られた。

「きゃー!りの、りの!この人でしょ?」

「やだ、格好いいじゃん!」

「りのの事宜しくお願いしますね?」

「え、あ、」

「ちょっ、皆!」

きゃあきゃあとりのを押し退け前に出てきた三人は剣心を観察しつつ各々で話し出す。

三者三様に話されて困惑しつつも話の内容からして悪い事ではなさそうだが…。
りのが顔を真っ赤にして三人を止めようとしている。

「なによぅ、いいじゃない!あんたの恋人なんでしょ?」

「今まで色恋に興味なさそうと思ってたらこんな格好いい人捕まえてるなんて」

「そりゃあ道場の男の子達を片っ端から振ってく訳だよねー」

「違っ、恋人なんてそんな…」

「いーっていーって、隠さなくったって」


.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ